1 / 12
夢
……朝日に目を刺され、嫌々ながらも起き上がる。頭に残るのは……何時もと違う、温かな温度。
忌々しく思って頭を振る。
何の理由が在って、俺はこんなにも安心しているというのだ。
起き上がって、髪を搔き回す。
……濃いくまと相まって、ただの俺ができあがりだ。優等生でも劣等生でも無く、教室の隅で周りを見詰めている、俺の。
苛ついて舌打ちをする。
カーテンを開けて、夏真っ盛りの空を睨み付けた。……嫌なくらいの青さで、俺を嘲笑う色。
俺がこの世で最も嫌いな色。
ぴりりりりり……。
突然の着信音に俺の肩は跳ねる。
枕元で充電コードに囚われたケータイを、俺は持ち上げて電話に出る。
「……こんな早朝から何の用だ、リク」
『あり、なんかレイト不機嫌? それよりも朝だぜ! 夏休みだぜ! 遊ぼう!!!!』
俺は無言でその電話を切る。
……あいつの声を聞くと苛つきが収まる。それが、また不思議な話だ。そして、同時にこの事実は俺の心を搔き乱す。
俺は、龍空のことを信用してしまっているのでは無いか、と。
……嫌な事だ。俺はもう、誰かを信用して傷付きたくない。だから俺は誰も信用しないことにしているのだ。
だから、安心する相手というのは居てはならないし居ては可笑しいのだ。
……複雑だな。
ともだちにシェアしよう!