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陽だまりのような人4

 熱が随分高いな。さっきより上がっているようだ。  私の肩にもたれ、苦しそうに浅い息を繰り返す洋月の君のことが心配だ。とにかく濡れた狩衣をどうにかしてやらないと……躰の熱が持っていかれてしまうだろう。このまま岩場にいては駄目だ。雨が小降りになったら、どこか休める家を探そう。 「洋月の君、大丈夫か。どこかでしっかり休んでから帰ろう」 「……うっ……寒い……」  ぶるっと躰を震わせる青白い顔に不安が募り、一刻も早く温かい場所で介抱してやりたくなった。だから熱でふらふらしている強引に洋月の君を馬に乗せ小雨の中、移動することにした。  山奥を馬に任せて彷徨っていると、ようやく一軒の古びた家屋に辿り着いた。  窓の隙間から覗くと人の気配はない。だが最近空き家になったばかりなのか、傷んではいない調度品が中に見えるので、思い切って入ってみることにした。 「洋月の君、熱が高いのから今宵はここで休ませてもらおう」 「それは……駄目だ。帝に怒られてしまう」 「それなら鷹に文をつけ飛ばし、供のものに知らせておくから、心配するな」 「……すまない。迷惑かけて」  崩れるようにしゃがみ込み、壁にもたれている洋月の君が痛々しい。いつも宮中では眩いばかりの美しさの洋月の君が、今はこんなに苦し気に頼りない姿を曝け出している。  なんとかしてやりたい。いつものように輝く君に戻って欲しい。まずは濡れた身体を温めてやらないと。何かないかと辺りを見渡すと、ちょうど殿方の直衣が部屋にかかっていたので、洋月の君に渡してやった。 「濡れた狩衣を着替えよう。さぁ……一人で脱げるか……」 「……うん」 「……どうやら無理そうだな……私が手伝ってやろう」  洋月の君の着替えを手伝ってやろうと襟元に手を伸ばすと、ドンっと突き飛ばされた。 「えっ」  明らかに目を見開いて驚いた表情をして、かなり動揺しているのが手に取るように伝わった。ふたりの間に緊張が走る。 「そんなに驚くなんて……悪かったな」 「あっああ、悪い。一人で着替えられるから、あちらを向いていてくれないか」 「おいおい男同士で何を恥ずかしがる?だいたいそんなにふらふらの熱がある躰で何を言う」 「……お願いだ。一人で着替えさせてくれ……大丈夫だから」  そういえば洋月の君は、人前で肌を見せることを全くしない。真夏でも着崩すこともせず。それには何か訳でもあるのか。戸惑うような悲痛な声で頼まれては、こちらも分が悪い。 「分かった。ではあちらの部屋にいってるから、この布で躰を拭いて着替えろ」 「……ありがとう」

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