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永遠の契り 1

 シュッ……  帯が解かれる音が、静寂の中、風を斬る。  結った髻を崩されると、漆黒の髪が扇のように床に散った。それはまるで絹のようにサラサラと優美に広がった。 「……」  信じられないことに俺は今、丈の中将に躰を求められている。緊張のあまり普段なら聞こえない音まで聞こえてくる始末だ。あまりに静かすぎる部屋でお互いの息遣いと衣擦れの音だけが響き、恥ずかしさに耳を塞いでしまいたい衝動に駆られながらも、俺はじっと時が過ぎるのを待った。  スルリと抜かれた帯はそっと脇に置かれ、丈の中将の手が俺の肌着の更に奥深くへと伸びて来た。そしてゆっくりと純白の衣が開かれ何も纏わない姿でその上に仰向けにそっと寝かされた。  恥ずかしい。これでは牡丹に付けられた痕が丸見えになってしまう。顔を横に背け頬を赤らめ懇願した。 「明るい所で見ないで欲しい。暗くしてくれないか」 「洋月の君……大丈夫だ。君は凄く綺麗だ」 「お願いだ。灯りを消して欲しい」 「静かに」  その時突然、丈の中将が俺の耳たぶを噛んだ。  ピリッ──  痛みとは違う感覚が、俺の心と躰に甘美な麻酔をかけていく。何度も何度も甘噛みされると躰の奥がじわじわと湿ってくるのが分かる。 「駄目だ……このようなことをしては」  口では理性を保っているようで、躰は正直だ。開かれてしまえば俺の躰はすぐに崩れてしまうのが、恥ずかしい。こんな風に躰がすぐに反応してしまうなんて、それを見られたくない。 「んんっ」  次第に声を我慢できなくなり、男のものと思えない甘い吐息が外に漏れてしまう。その声は口から零れ、丈の中将の首元をかすめると、丈の中将が溜まらない表情を浮かべ俺を見下ろした。 「洋月の君は美しい。女子以上に綺麗だ……その身も心も美しいよ」 「違う。俺は……穢れている。汚れている」 「何故? こんなに美しいのに?」 「知っているのだろう? 俺が誰に抱かれ続けていたのか、気が付いているくせに……」 「それは……」 「話してもいいか。聴いてくれるのか」  あぁ、とうとう自分の口から漏らしてしまった。  俺の身に十五歳の時からのしかかっている受け入れがたい事実。でもこのことを知らせないといけないと思った。きちんと話して、それでも俺を求めてくれるのなら、俺もこの躰のすべてを丈の中将に捧げたい。そう思うから、俺は今から告白する。  ── 勇気を出して、君と契りを交わすために ──

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