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息がつまりそうな部屋の中、お互いに服を緩慢な動きで着替える。
稔さんは悄然とした表情で、ネクタイを結ぶ手が微かに震えている。
昨日とは打って変わって、部屋の空気がかなり重い。
「玲くん……」
身だしなみを整えた稔さんが、囁くように僕に呼びかける。
「僕のこと好きかい?」
稔さんが僕の目を見つめる。その表情は冷たく、どこか別人の様にも見える。
「……好きですよ。好きじゃなかったら、昨日の段階で突き飛ばしてますから」
僕は少しでも場を和ませようと、声を明るめに出す。
「ありがとう」
稔さんの表情が少し和らぐ。
「でも……これだけは、覚えておいて欲しい」
稔さんの表情が再び険しくなる。
「僕は君に嫌われようとも、君の事を守るからね。その為に警察官になったんだから」
僕は目を見開く。僕を守る為に警察官にーー。
思考を遮るように、軽快なインターホンの音が部屋に鳴り響く。
思わず稔さんと目を合わせてしまう。
稔さんは硬い表情で、静かに頷いた。それを合図に、僕は玄関に向かい扉を開ける。
ドアを開けると将希が、不機嫌そうに立っていた。いつも以上に、表情が険しいように感じられて、言葉をかけられない。
僕は無言のまま脇に避けると、将希がずかずかと上がり込む。
ついに対面の時が来たと、僕は足が震えて吐き気すらしてくる。
ここまで緊張するのは初めてだ。センター試験の発表日ですら、ここまで緊張していなかっ
たと思う。
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