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結合11

 玲くんは引っ越しをせざるを得なくなっていしまったようで、僕は再び期待に胸を踊らせる。  このアパートなら徒歩二十分ぐらいの距離で、大学に着くはずだ。  親からの仕送りがあるとはいえ、駅近くだと家賃相場も上がるだろうし、引越し費用もかかるだろう。  案の定、それから一ヶ月ほどして引っ越しのトラックが止まっているのを見つける。  アパートの鉄階段を登っていく、玲くんを見たときには思わず椅子から立ち上がる。  喉が震え思わず涙が、溢れだした。 「おい! どうしたんだ!」  流石に上司が驚いた様子で、僕の顔を覗き込む。 「すみません。なんでもありません」  僕は涙を拭い、微笑みを見せる。  上司は、訝しげな様子で「取り敢えず顔洗ってこい」と僕を裏に促す。  僕は震える足をなんとか動かし、奥の部屋に向かう。 本当に長かった。こんな奇蹟はなかなかない。  一生チャンスがないまま、玲くんを言葉通り『見守る』だけになってしまう可能性もあった。  乾いた唇を舐め、僕は興奮に打ち震えた。

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