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結合10
――あの日から三年目の冬を迎えた。
玲くんが大学生になり、大学の近くに一人暮らしで住んでいたことは知っていた。
僕も二年目になるときに、移動があるとのことだった。
希望先を玲くんの大学付近にする為に、予め上司に相談していた。
日頃から、上司のお酒の付き合いや、仕事熱心な様子を見せておけば必然的に気に入られる。
その甲斐あってか、なんとか希望の地域に移動することが出来た。
地元から1時間ほど離れ、都心に近いこの場所は華やかしさに今ひとつ欠けていた。
下町風情がほんのりと漂う、駅近くの商店街は活気づいている。
アパートの向かいに立つ、交番での勤務が決まった。
ここのアパートに玲くんが越してきたら、どんなに良いだろうかと淡い期待に胸が沸き立つ。
大学付近、もしくは玲くんが大学生二年生に始めたコンビニのバイト先で声をかけることも出来なくはない。
ただ、「初めまして」で近づくのはキッカケがないと難しい。
ましてや、同じ学校だと知られると確実に時仲くんに話をするだろう。
僕は玲くんを遠目で観察しながら、もやもやとした気持ちを持て余していた。
転機が訪れたのは、玲くんが隣人に襲われたことだ。
管轄地域が違えど、知り合いだと言えばそれなに情報を得ることが出来た。
僕が思い詰めた様子で、相談すれば上司は無碍には出来ない。
両者が男で、突発的な犯行だったこともあってそこまで大事にはならなかったようだ。
相変わらず、警戒心が薄い玲くんに少し呆れてしまう。
それと同時に、自分が玲くんを守れる立場にあると自然と喜びがこみ上げてくる。
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