90 / 90

結合16

――そして今に至った。  すやすやと寝息を立て、無防備な玲くんを何枚か撮影した後、僕は玲くんが眠る横に座り込む。 「……玲くん。愛してるって事と、君を守るってことは本当だよ」  月明かりにぼんやりと照らされ、白く浮かぶ玲くんの顔を見下ろし呟く。  僕は玲くんが望む、『好青年でいい人』を演じ続けるつもりだ。  隠し撮りの写真は実家の自分の部屋置いてあるので、そう簡単にバレることはないだろう。  いつでも見ることが出来ないのが、惜しいけれど……。  でも、これからは好きな時に写真を撮ることが出来る。  僕は嬉しさで、目元に涙が滲んでくる。  柔らかい風が吹き、玲くんの前髪が目元に落ちる。その髪を優しく僕は指で退ける。  くすぐったかったのか、一瞬身じろぎをして眉間に皺を寄せる。すぐに力が抜けたように表情が和らいだ。  僕は思わず、微笑んでしまう。  何度見たって飽き足らない。何度触れたって物足りない。  ずっと、ずっと手放せないだろう。  急に目の前にいるのに寂しさを感じ、玲くんの左手を自分の左手で優しく包み込む。  指に光る互いの指輪を見て、ほっと胸を撫で下ろす。  僕は一つ息を吐き出し、窓の外に視線を向ける。  月に照らされたガマズミの花は、白く光り輝き手招きするように揺れている。  他にも植えられていた草花なんて、物ともしないような絢爛(けんらん)さだ。  秋には赤い実を付けるので、それでお酒を作れるらしい。  二人の家の庭先に、この木を植えよう。  時仲くんとの思い出の花としてではなく、僕たち二人の思い出の花にしてしまえばいい。  旅先での新しい人生の第一歩として、その記念すべき花として……。 end

ともだちにシェアしよう!