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第6話

 「ごめんな、あいつ好き勝手やりたい放題で。そうやって育てられたから良いことと悪いことの区別がつかないんだよ」  先輩に代わり謝る先生に、立てるかと言われ頷くが、立ち上がれなかった。足が震えて動けないからだ。でも、先生は先輩みたいに強引に俺に触ってベッドに連れて行くことはせず、ただ、そばにいてくれただけだった。それが今の俺にはすごく安心した。  「恋人って、お前はあいつのこと好きじゃないんだろ?」  その声にこくこくと頷くと、先生はまた溜息をつき眉間に皺を寄せる。長く吐く息が、俺の前髪を揺らす。  「あいつの中では付き合ったってことになってるけど、お前は別れたいか?」  その質問に少し悩んだが、もちろんと頷いた。やっぱり、俺は男で、先輩も男。それに、あんないけ好かないやつが恋人なんて有り得ない。  「あいつはな、自分を好きなやつが嫌いなんだ。別れたいなら好きって言ってやれ。嫌かもしれないけど、それしか別れる方法は知らん」  自分を好きな人が嫌いって、変わってるなと思いながら、先輩と会った北階段でのことを思い出した。もしかして、あの女の子が振られたのは先輩に好きと伝えてしまったからだろうか。てっきり、誰かの泣いた顔や絶望した顔が好きなのだと思ってたけど。確かに、俺の泣き顔を見ても嬉しそうではなかったし。  「今度、言ってみます」  それだけ言ってあとは二人とも喋らなかった。そのうち床の上でウトウトして眠ってしまうまで、先生はずっとそばにいてくれた。

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