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「眞部さん」 六時過ぎ、会社から近い大手電化製品店に残業の合間USBを買いにきていた俺。 振り返れば嘉月が立っていた。 バイト君は基本残業なし、六時五分前に帰宅準備を始め、六時になればさーっと退社する。 「まだ残業ですか」 「うん、今日はあっち行ったりこっち行ったりでバタバタだったから、でもまぁ後一時間くらいで帰れるかなぁ」 「飯、行きません」 「え?」 バイト君、また先月と同じく給料日前の俺に奢らせる気満々みたいです。 「眞部さん、どんなタイプが好きなんです」 「んー俺はぁ……ひっく……価値観合って、バラエティの笑いどころが一緒で、優しいコかなぁ」 「おっぱいでかいコでしょ」 「ちっ違うもん!」 「ぱいずりできるコでしょ」 「違うって!!」 居酒屋でウーロン茶を飲む未成年嘉月はほろ酔い気分の俺に剥いた枝豆を投げた。 条件反射? で? 俺がぱくっと口内でキャッチすれば「よくできましたねー」と褒めてくる、完全下に見てんな、こいつ。 「やっぱり掌に余るカンジがいーわけですか。この店員さんくらい?」 「えっ? やだっ」 満更でもなさそうに皿を下げながら笑う店員、さすが十代イケメン、怖いもの知らずだな……。 飲み過ぎた。 頭んなかふわふわしてる、吐き気はない、でも自分が今どこにいるのか、なにしてるのか、いまいち把握できない。 カチャカチャ………… 「んー……?」 「そーですか、眞部さんって俺の年で脱童貞したんですか」 下らへんから嘉月の声が聞こえてきた。 ていうか、俺、そんなことバイト君に話したのか、ぜんぜん覚えてない、やばいな、係長の悪口とかうっかり喋ってないよな……? 「……ここ、どこー……?」 やたらピンク色の照明。 そんなに眩しくないから不快じゃない、ん、だけど……。 むしろきもちいい? 「うわ、まっすぐ勃っちゃって、年の割にイイ反応ですね」 俺はぎょっとした。 やっと気が付いた、ここ、ラブホ、そんでベッドの上、カチャカチャ言ってたのは俺のベルトが外された音。 足元に蹲った嘉月が俺のペニスを勝手に取り出して、なでなで、していて。 「わー!! なにしてんの!?」 「チンコ触ってますけど」 「やっそれは見てわかる! なんで!? なんで勝手に人のチンコ触んの!!」 「チンコ触りたかったからですけど」 なにこの会話、不毛過ぎだろ!! 「俺ね、バイなんです」 いつの間に上着を脱がされて、第一ボタン外れたワイシャツに緩んだネクタイ、スラックス前を寛がせた俺に嘉月は平然とカミングアウトしてきた。 「眞部さん、えっちしません?」 「えっやだ!」 「しましょーよ、せっかくラブホ来たんだし」 「むっむり!」 「あ、ちなみに眞部さんが挿入()れる方ですよ?」 「……あ、そなの?」 いやいやいやいや、そこでぐらっとするなよ。 四年間彼女不在だからって、ここ一か月ヌく時間もなかったからって、だからって。 バイトでバイの嘉月に……挿入れるなんて……。 「こんな勃たせて、いーですよ? 俺に射精()しても」 「えっ」 癖のないサラサラ前髪が嘉月の片目にぱさりとかかった。 服を着たままでいたバイト君、俺のペニスにぬるりと舌先を。 「う」 「いーですよ……? ナマでしちゃっても……?」 頭ユル女と称したGさんの言葉をなぞって、嘉月は、男のくせにえろい笑みを浮かべた。

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