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その日も俺は当たり前のように残業決定、外部から業務委託されている新品タブレット数百台のセットアップ作業のチェックに追われていた。 「お疲れ様でした」 短期で雇っている学生三名が五時半にはけて多目的ルームには正社員の俺とバイトの嘉月、二人きりになった。 「納期、間に合うんですか」 「間に合わせないと。ただ開発部の方でインストールする自社アプリに不具合見つかったっていうから、どうなるかなぁ」 「遅」 「えっあっごめんっ」 「Wi-Fi。接続悪い。ルーターまた切り替えてくれます」 学生がいなくなったから、もうちょっとこう……らぶらぶな雰囲気? 出してもいいと思うんだけどな? 一応、俺達お付き合いしてるんだし。 「今日はこれ一台で終わりにしよ」 ビビッドって言うらしい爽やかイエローのジャケットにデニムシャツと白カットソー、で、下は……グレーのスウェット……とうとう部屋着的なもの職場に着てきちゃいましたよ、このコ。 「そっちは残業ですか」 「うん」 「何時まで」 「このペースだと八時過ぎくらいかな」 「ふぅん」 「あっ来る? 俺んち来る?」 今日は金曜日だ、明日の土曜日は俺も休みだし、お泊まりしてもらったって何の問題もない、 「貴重な週末、あんたのためだけに毎回割けないって」 ……し、しどい。 「俺にも予定があんの、眞部さん」 ……フンだ! 六時になって嘉月が去り、バイト達の作業チェックをしていたら、いつの間にかブラインドの向こうは真っ暗。 集中したおかげで結構な台数をこなせた、今日はこの辺にしとくか。 思いっきり背伸びをし、消灯して戸締りし、正社員のいる上のフロアへ、まだいた係長とその他に挨拶して欠伸を噛み殺しつつ帰り支度をし、五階建ての自社ビルを後にした。 飯どうしよっかな、明日明後日はちゃんと作ることにして、今日はどっかで済ませるかなぁ。 「眞部さーん」 胸を擽るような何とも甘ったるい声に呼び止められて俺は振り返った……。

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