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話題の彼は砂嵐
次の日、学校に行くと奏は来てなかった。
昨日から体調が悪かったのかな?
お見舞い
だめだめ!!一人でゆっくり休みたいかもしれない。
林檎くらい……いや、そーゆーのでなし崩しになったら意味ないし、ここまで!って線引きするの苦手なんだよな。
「優斗〜」
緩めの声がしてドアの方を見ると、銀色の綺麗な長い髪をポニーテールにした優しそうな人がいた。
途端に優斗ががたっと音を立てて立ち上がる
「伊織先輩!!」
イオリ先輩。……あ、……この人か!!
バッともう一度伊織先輩の方を見ると、ニコニコと柔らかくて優しい笑顔を優斗に向けていた。
「実はいきなりだったからさ、連絡先交換してなかったなぁ〜って思ってね?優斗、交換してくれる?」
「もちろん!!」
なんか花が飛んでる。白くて小さくて可愛い花がポポポポーン、ポポポって感じで飛びまくってる。
なんかいいなぁ、ああいう感じ
「そうだ、今日実は全校朝会だから、楽しみにしててね」
そう言って伊織先輩は優斗に手を振りながら去っていった。
優斗もご主人様に会えた犬の尻尾のような速さでブンブンと手を振っている。
思ったよりも優雅で綺麗な人だったな。
物静かそうで、英国で紅茶をカップで飲んでいそうな絵が似合う。
だが、全校朝会でそのイメージはボロボロに砕けた。
英国は俺の想像程度では届かないほど遠かった。
「最後に、俺。沢邑伊織は1年B組の桜庭優斗君とお付き合いすることになったのでよろしくね?優斗に何かあったら俺が許さないから、」
生徒会会長挨拶の最後にサプライズ発表をぶちかました伊織先輩の言葉によって一斉に1Bに向けられる視線。
どいつだ?と探す人達の視線に自分も含まれていると思うといたたまれない。
え〜!!と残念がる女子が多いところ見ると相当の人気があったようだ。
当の本人は顔を真っ赤にして、俯いているうえに背が低いからあまり皆からは見えていないみたいだった。
伊織先輩はニコニコして、じゃね〜と言って壇上を去っていった。
優雅で貴公子的なイメージを持っていたが、ひっちゃかめっちゃかに掻き乱していく砂嵐のような人だ。
第一印象は所詮第一印象だったということか?
それに伊織先輩はすごい。俺は、男同士で付き合ってるってあんなに堂々と言えない。
恥ずかしいと言うよりは、怖い。
奏に会いたいな。
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