620 / 903
第11話 初詣
冬斗兄さんは深い溜息をついてから僕の方を見た。
「優月達の事を理解できないんじゃないんだ。優月が他の人達から傷つけられる事が心配だった。けど心翔君と優月と話して2人なら大丈夫だと思えた。ごめんな優月」
「冬斗兄さん。謝らないで心配してくれてありがとう」
僕は泣くのを我慢していたけど冬斗兄さんが笑いかけてくれた時に嬉しくてポロポロと泣いてしまった。
「冬斗、この2人なら心配ないわ。私も見守っていくから安心してよ。それに、2人の周りには強い味方がたくさんいるんだからね」
桃お姉様も僕達2人にはすごく強い味方だよ。
僕達は周りの人達に見守って貰ってるんだと改めて実感した。
「優ちゃん、良かったな」
「うん」
心翔は僕の頭を撫でてくれた。
「良かったね。優月君」
直も泣きそうになっている。
泣いちゃうとお化粧が大変な事になるから必死に泣くのをこらえていた。
「優月、その女の子は誰?」
冬斗兄さんは直を見て言った。
この状況で直だと言って良いのだろうか?
「僕は、竹田直です。桃お姉さんに着物を着せてもらいました」
直は下を向いて心輝の手をギュッと握りながら恥ずかしそうに冬斗兄さんに言った。
「えっ?桃姉さん・・・またいつもの悪い癖が出たの?」
冬斗兄さんは桃お姉様を睨みつけながら呆れた顔をしている。
いつもの?
「冬斗がいつも嫌がるから仕方ないでしょう」
「僕は女装の趣味ないからね。直君が可哀想だ」
もしかして、冬斗兄さんにも女の子の服を着せようとしてたの?
ともだちにシェアしよう!