812 / 903
第29話 もう少しで Side使颯
賢吾の傷を消毒して手は血が出てるほど傷にはなっていなかったから軽く包帯を巻く程度で処置をした。
さっきから賢吾は僕と目を合わせてくれない。
初めの頃に戻ってしまった感じで誰も寄せ付けたいようとしている。
「賢吾・・・・・・痛む?」
僕に聞けたのはそれが精一杯だった。
賢吾になんて声をかけて良いかわからない前みたいに使颯って呼んで優しく僕に触れて欲しいのにどうしたらいいの?
「あのね。自分が原因で周りを巻き込むとか嫌で自分が犠牲になれば良いとか思ってたでしょ?僕もそんな時があったんだ。僕がだまって犠牲になっても周りは心配して動くんだよ。上手く言えないけれど頼るとかも必要だと思う。それを心翔とか周りの皆んなが教えてくれたんだ」
頼る。
僕は頼るというより利用した。
「ごめん優月君。僕は君達を利用したんだ。仲良くしていたら彼奴らは賢吾に手を出さないんじゃ無いかって・・・・甘い考えだった。ごめん」
「そうなの?全然気づかなかったよ。話してくれたら僕はクマちゃんに相談したよ。彼奴らは許せないからね」
ニッコリと笑って怒ることもせずに僕達の心配をしてくれる優月君を見ていたら僕のした事が恥ずかしくなってきた。
「本当にごめん優月君」
「気にしないでよ。友達になったんだもん。助け合いは必要だと思うよ。何かあったら話してね。僕とかで良かったら力になるよ」
「うん」
友達とか思っていてくれたのが嬉しくて泣きそうになる。
凄く優しくて可愛らしい優月君に僕は酷い事をしたのに・・・・・・。
「優ちゃん。大丈夫か?」
勢いよく扉が開いて心翔君が息を切らしながら保健室へ入って来て優月君を抱きしめた。
「ちょっと・・・僕は大丈夫だよ。強いの知ってるでしょう?」
「分かってるがトラジ先輩が教室に来て教えてくれたんだよ。あまり心配させないでくれよ。心臓に悪い」
優月君が心翔君から逃れようとしているけれどビクともしない。
それだけ心翔君が優月君を心配していたんだよね。
心翔君にも謝らなきゃダメだ。
ともだちにシェアしよう!