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第24話

紫乃は始と話し合うために部屋の鍵を俺から貸して始がいる俺達の部屋に向かった。 終わったら連絡くれるらしくて、それまでそこら辺をうろうろしようかなと考える。 偉そうな事言ったけど、口で伝えないと何も伝わらないよな。 俺もそうだった、口で言わないと伝わるわけないんだ…言葉を喋れる人なんだから。 俺も紫乃達の関係を見て学ぶ事があるなと考えていたら隣でガサゴソ聞こえて驚いて隣を見た。 いつの間に帰っていたのか飛鳥が俺の隣に立っていた。 「い、いつからいたんだ?」 「…俺、マニアックな趣味はないけど…好きにしてとか言われたら頑張らなきゃな」 「言ってない!」 ちゃんと確認したのに聞いてたのか、いつからいたんだ? 飛鳥のニヤニヤした顔が腹立つ、マニアックな趣味は俺だってない! 俺の隣に飛鳥が座り、真っ白の何の変哲もない天井を眺める。 俺はお茶を飲み干し空のペットボトルをゴミ箱に捨てた。 大きく背伸びをする、飛鳥はそんな俺をジッと見ていた。 飛鳥はどう思ってるんだろう、俺のためならどこまでしてくれる? 「なぁ飛鳥、もし俺が抱きたいって言ったらどうする?」 「却下」 「即答かよ、俺のためにしてくれないのか?」 「もし童貞で死ぬ病気だったら抱かれてもいい、俺はお前がいざピンチになったら手を差し伸ばせられる存在になりたい…そんな時腰痛めてたら意味ねぇだろ」 飛鳥は飛鳥なりに考えていたようだ、例えがよく分からない。 そんな状態には滅多にならないだろうが、飛鳥は真剣な顔をしていて口を閉じた。 飛鳥が抱かせてくれる時は俺が困った時か……なんかちょっとだけかっこよくて腹が立つ。 「俺の童貞は俺のもんだ!」と意地をはってみる。 あれ…?それって一生童貞でいいと言ってるようなものじゃないか? 一気に自分が情けなくなり、クスクス笑う飛鳥の隣に腰を下ろす。 スマホを確認する、まだ連絡はない…まだ数分しか経っていないしな。 「多分数時間は連絡ないぞ」 「…やっぱり、揉めてるのか?」 「じゃなくて、ヤるのに時間掛かるだろ」 一瞬飛鳥の言ってる意味が分からなかったが飛鳥のやらしい顔を見て顔が熱くなる。 紫乃と始がするか分からないだろ!と飛鳥の緩む頬を両手で伸ばしていると飛鳥に手を掴まれた。 近付く顔にキュッと目を閉じて心臓が高鳴る。 誰か見てるかもしれない、そう思うが一度火が付いてしまうと自分でもどうする事も出来ない。 深く深くキスをして舌が絡み合う、今日は二回目だけどすぐにトロトロに痺れてきた。 飛鳥が腰に触れてきてシャツの中に手を滑らせるから口を離した。 「…飛鳥、ここ…外…」 「分かってる、じゃあ何処でするんだよ」 お互い息が切れ切れで会話する、今は誰も通っていないが休日の廊下だ…誰が通っても不思議じゃない。 それに下半身もその気だ、昨日お預けだったしその反動も大きそうだ。 とはいえ部屋は紫乃と始がいるし、話し合いの邪魔はしたくない。 飛鳥は誰に見られても平気な顔をしているが一番恥ずかしいのは俺だ。 絶対部屋以外でしないと飛鳥に目で訴えると飛鳥は俺から離れて買い物袋をぶら下げて何処かに向かった。 訳も分からずとりあえず飛鳥を追いかける。 「飛鳥、何処に行くんだ?」 「外は嫌なんだろ?だから部屋に帰る」 「いやでも、部屋には二人が」 「よく考えたら俺達が生活する部屋で他人のしてるにおいとか気持ち悪い」 二人は常識あるし、そんな事しないと思うが飛鳥が本気の顔をしていて喧嘩にならなきゃいいけどと思う。 とりあえず紫乃に「今から帰る」とSNSを送った。 話し合っていたらスマホを見る事はないかもしれないが気付く事を祈ろう。 部屋の鍵は紫乃に貸したから、閉まってたらスペアキーを管理人室に借りに行かなきゃならなくなる、面倒だが閉め出されたままなわけにもいかない。 部屋の前に到着して二人に申し訳ないと心の中で謝りドアノブを掴んだ。 引っ掛かりはなくすんなり開き、引いて部屋の中に入る。 「鍵掛けてなかったのか、忘れるほどに始に会いたかったのかもな」 「…セキュリティ問題でアウトだけどな」 飛鳥の言葉に何となく棘を感じる、まぁ部屋に人がいるし寮に変質者は入って来ないと思うから大丈夫だろう。 中を見るとシーンと静まり返っていた、話し合いをしていると思っていたが違うのか? それとも二人はもういないのか?いや、玄関に靴があるからいるだろう。 自分の部屋なのに他人の部屋のような感じがして妙にドキドキする。 靴を脱いでリビングに向かう、二人になにかあったんじゃないかと不安になる。 そこで後ろにいた飛鳥は怒りを爆発させた。 「……何してんだお前ら」 聞いた事がないような低い声で静かに言う。 それがさらに怖い、俺に言ってないと分かるが俺までビビる。 紫乃と始はリビングにいた、それはだいたい想像していた。 しかし、紫乃が始を押し倒し服を脱がせていたのは計算外だった。 紫乃の言い訳は「我慢できなくてつい」だった。 飛鳥は二人の腕を引っ張り、部屋の外につまみ出した。 「なにもそこまでしなくても…」 「人の部屋で盛ってる方が悪い」 鍵を掛けて誰も入って来れないようにする。 紫乃は俺の鍵を持ってるんだけどな…まぁ、明日返してもらえばいいか。 飛鳥に腕を引かれ自室に向かった、触れ合った手が熱を持つ。 少々乱暴にベッドに寝かされ覆い被さる、二人分の重みでベッドが軋む。 この前食べていた飴の袋をズボンのポケットから取り出し、俺の口に運ばれ口に入れると蓋をするように唇が重ねられた。 息が漏れながら口の中に甘さが広がり夢中になり味わう。 二人で舐めるとすぐに飴はなくなってしまい物足りなくなってしまう。 もっとほしいと舌を出すと飛鳥はそれを見てニヤッと笑う。 「…やっぱりこれが一番合ってるな」 「………何?」 「俺は愛されるより愛す方が合ってるし、優紀は俺に愛される方が合ってる…愛のカタチは人それぞれでいいんじゃね?」 「ふっ…そうだな」 他人は他人、俺達は俺達…愛のカタチは人の数ほどあるんだ。 俺は飛鳥に愛されたい、飛鳥も俺を愛したいと思っている…それが俺達の愛だ。 飛鳥の首に腕を回して引き寄せるとまだ少し甘さが残った口の中を堪能する。 腰に触れていた手は服の中に滑り込ませて冷たい手にぴくっと反応する。 首筋を舐められると小さな声が漏れる、触れられる身体全てが感じる。 下半身も反応してきた、飛鳥の両手は腰と俺の手を握っている。 …触れてほしいって言うのはちょっと恥ずかしい…いや、もっと凄いことしたけどなんていうか…何となく。 「ひゃっ…!!」 「昨日お預けの分までとろっとろにしてやるよ」 ズボン越しに飛鳥ので強く擦られて甘い声を出す。 足を少し開き、首に回した手で黒髪を掴む。

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