71 / 82

第71話

テスト期間が終わり、結果が書かれた紙が壁に張り出された。 俺は赤点じゃなかったら順位とか気にしないから普段は見ないが、緊張した顔の紫乃と始により連行された。 途中でトイレに行こうとしていた飛鳥も連れてかれた。 紙の前では多くの生徒達が集まり順位に笑みを見せたり落ち込んだりしていた。 ついでだから俺も見とくかなと自分の名前を探す。 45位か、まぁまぁ上か…紫乃と始は赤点の名前のところだけ確認している。 順位は100位しか載らないからな、ランクインしてるとは思っていないのだろう。 何となく流し見で順位を見ていく。 「おっ、飛鳥一位じゃん凄いな」 「……あ?あぁ」 飛鳥は順位を見ていないのかイライラした顔で紫乃と始を見ていた。 二人は赤点に名前がないのを確認して喜んでいた。 赤点は名前が貼り出されるから嫌だよな、ちゃんと勉強しろって事なんだろうけど… 勉強を教えてくれた飛鳥と喜びを分かち合おうと飛び付こうとしたら避けられた。 そして急いでその場を後にした。 そうか、トイレの時連行されたんだしな。 紫乃と始が飛鳥を追いかけていくのを眺めながらもう一度順位を見る。 期末で満点なんて聞いた事ないな……ん? 飛鳥の名前しか見てなかった一位がもう一人いるんだな。 『|立花《たちばな》|俊太《しゅんた》』と名前が書かれていた。 隣のクラスか、ふーん。 俺は昼飯どうするか紫乃にSNSのメッセージを送りのんびり廊下を歩いた。 飛鳥大変だな、と苦笑いした。 ーーー 放課後、俺は図書室で古城と会っていた。 赤点の欄に古城の名前がなかったから古城も赤点は逃れた事は分かっていた。 「良かったな、赤点にならなくて」 「まぁな、お前のおかげだ…ありがとう」 「…………」 「な、なんだよ」 「…いや、素直だとおもっ」 そう言うと古城は不満そうな顔をしてそっぽを向いた。 古城も嬉しかったのだろうな、いつものツンデレを忘れるくらいには… もう俺が勉強を教える事はないな、後は古城が自習をちゃんとやればいいだろう。 図書室は今日人気がない、期末が終わったし皆早く帰りたいのだろう。 司書もカウンターで眠そうにしている。 俺も早く帰って……帰って… そこで思い出した…そうだ、俺…飛鳥と約束してたっけ。 考えたら頬が赤くなってきた、飛鳥に知られたらまたエロい顔とか言われるんだろうな。 …今は飛鳥はいないし、あ…そうだ…古城の顔を見て落ち着こう。 本棚に寄りかかる古城を見る。 「…うん、落ち着いた」 「……は?なにが?」 「いや、何でもない」 「…もう、会えないのか?」 ふと古城がそう呟いた。 同じ学校だし、クラスが違っても会えるだろう。 そう言うが古城はみるみる気分が沈んでいく。 俺がいるから勉強をサボれると思うなよと思うがそれだけではなさそうだ。 まぁ短い期間だったけど、何とも思わなかったわけではない。 友人と呼べるほど仲良くはなってないが…むしろ喧嘩ばかりしていたが、知り合いくらいにはなったような気がする。 もしかして古城、友達がいないのか? だから友達になりたいとかそういうのだろうか。 紫乃なら友達が増えるの喜ぶだろうしそれならいいと思うぞ。 「…初めて会った時覚えてるか?赤点免れたら俺の言う事聞くって約束…」 「えっ、あぁ…したな、そんな約束」 実はすっかり忘れていた。 あの時は飛鳥の事が気になっていてそれどころではなかったからな。 そうなると約束とはやはり友人になってくれとか? いや、命令されてなるものじゃないよな。 不器用か?不器用なのかコイツ。 向かい側の本棚に寄りかかる俺の前に立つ。 そして俺の顔の横に両手を付いた。 「…どうした?古城」 「………ってくれ」 小さく古城はそう呟いた。 聞こえるか聞こえないくらいの小さくか細い声だった。 でも至近距離である俺にははっきりと聞こえた。 「キスしてくれ」と言ったか?コイツ…

ともだちにシェアしよう!