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第72話

「…えっと、なに?」 「だ、だから俺とキスっさせてやるって言ってんだよ」 聞き間違えだったらいいな…はっきり聞こえたけど… そう思ってまた聞いたがやっぱりそうだった…しかもなんか偉そうになってるし… なんでそんなに上から目線なのか毎回不思議に思う。 俺は「無理です」と自分でも驚くほど冷めた声で言った。 そういうお願いは全面的にお断りしております。 ……なんで最近こんなのばかりに会うんだよ。 「何でも聞いてくれるんじゃないのか!?」 「そんなお願いされるなんて普通思わないだろ!」 せいぜい昼飯奢れとかそんなのだと思ってたんだよ。 この学校はそういうのが多いからって普通警戒しないだろ。 物好きなのは飛鳥ぐらいだと思っていたんだからな。 ……まぁ変な盗撮魔がいたけどな。 あれは特殊だと思っていた。 とにかく俺は飛鳥がいるから無理だし…いなくても無理だからな。 「俺、恋人いるから無理だ」 「こ…恋人?……………俺より顔がいいのか?」 苦い顔をして古城は諦めが悪い事を言う。 正直に言うとそうだな、でも俺は顔で選んでるわけじゃないからたとえ古城より顔が悪い恋人でも浮気はしない。 「そうだな」と軽く古城をあしらい古城の腕から逃れようとしたら突然抱き締められた。 調子に乗るな、いい加減にしろと古城を睨むと強く肩を捕まれ本棚に押し付けられた。 またこれかと自分の不運を呪う。 でもいつまでも飛鳥に助けてもらうわけにはいかない。 …今度は俺が自分でなんとか切り抜けないと… 「離せ」 「た、試しにキスしてみれば分かる」 「そんなもん試したくねぇよ!退け!」 「うぐっ…」 俺はキスを迫り近付いてくる古城の腹を蹴った。 腹を押さえてうずくまる古城を見下ろす。 恋人がいるって言っても諦めないんじゃなんて言えばいいんだよ。 ため息が漏れる。 古城は俺を涙目で見上げる。 そんな強く蹴ったつもりはなかったが痛かったか? 俺は古城と目線が合うようにしゃがんだ。 「……さん、じょう」 「古城、お前が俺にそういう目で見なくなったら昼飯奢ってやるよ」 古城は悪い奴ではないと思う、だから俺の事をきっぱり諦められたら友達になろう。 俺が何を言っても諦めそうにないから俺は何も言わない。 ただ、個人的に会う事はもうないだろう。 俺は古城に背を向けて図書室を後にした。 図書室を出ると扉の横に寄りかかっていた人物がいた。 こんなところで何してんだか… 「入りたければ入ればいいのに…」 「いや、お前がどうするか気になってな」 ニヤニヤと飛鳥は笑う。 俺がお前以外に靡くわけないだろう。 俺達は並んで廊下を歩く。 むわっとした暑さが廊下に染み渡り暑さで汗が流れる。 寮はクーラー完備だから早く寮に帰りたい。 なんでこの学校夏にネクタイしなきゃいけないんだよ。 普通しないだろと不満そうにネクタイを外す。 ふと何やら痛い視線が気になり隣を見ると飛鳥が無表情で俺を見ていた。 「…何だよ、見えてないだろ」 「違う…ここ」 飛鳥はチラッと見えるだけで厳しいからそう言うと飛鳥は突然胸を両手で鷲掴みしてきた。 いくらこの廊下が人が少ないからって止めろと飛鳥の両腕を掴む。 しかし飛鳥は引くほど真剣な顔で俺の胸を揉んでいる。 ……揉むほどねぇよ、バカ飛鳥。 しかしわざとか……わざとだろうな、飛鳥にやらしく揉まれてピクッと反応する。 飛鳥の頭に鉄槌を食らわす。 「いってぇな、なんだよ」 「それは俺のセリフだろ!何してるんだ!」 「…乳首勃ってる、アイツになにかされたのか?」 「されてねぇし!…これは、暑くて…」 なんか説明するのも恥ずかしくてもごもごと言う。

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