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第76話

※視点なし コツコツと靴が並び歩く足音が二つ鳴り響く。 いつもは賑やかで人が多いそこは静寂に包まれていて自分の姿が見えないほど真っ暗だ。 頼りなのは懐中電灯代わりのスマホの光だけだ。 足元を照らしながら進む。 窓の外を見ると外も同じように真っ暗でザザッと風に揺らいだ木が不気味に笑ってるようだ。 足音の一つが止まり、続けてもう一つが止まった。 「な、なぁもう帰らね?」 「何言ってんの、今日しかないんだよ?」 「…だ、だからって…紫乃ぉ」 弱腰で情けない始は紫乃と握ってる手を引っ張るが紫乃は止まらず始はずるずると進む。 仕方なく始も歩き出す。 本当は来る前は紫乃が怖いとか言って頼りにされる事を期待していた。 しかし現実の紫乃はとても頼もしくて始が紫乃の後ろに隠れている状態になった。 紫乃を守るカッコいい男を演じたかったのにとギリギリと悔しがるが、紫乃の後ろから出れない。 紫乃は始に表札を照らしてとお願いして表札を照らす。 「ここ?笑う肖像画って…」 「ま、まぁ…ただの噂だし…ほらもう帰っ」 「あれ?なんか聞こえない?」 紫乃がドアに向かって耳を付ける。 紫乃が脅かしてると思い「や、やめろよ…」と小さく呟く。 しかし紫乃は口元に人差し指を当てた。 始は口を閉じる、耳を塞ぎたいが懐中電灯代わりのスマホを持ってるから防げない。 すると「うっ、うぅ~」という男の低い声が聞こえた。 始は青くなり、紫乃に早く帰ろうと肩を揺する。 しかし紫乃は帰らないどころか肖像画を確認するからとドアの窓から光を当ててと言う。 中に入るのは怖がる始に遠慮してやらないが、外から見ても変わらないと始は思っていた。 そしてドアの窓から中を照らす。 すると肖像画を明るく照らした時、肖像画はキラリと光った。 『ぎゃあぁぁっっっ!!!!!』 二人の声が混ざり、走る足音が響いた。 ガタンと、その場に光がついたスマホが転がる。 しばらくしてドアが開いた。 スマホを拾う手が伸びた。 そして静かに光を消した。 ドアが閉まる音が響きまた周りは静寂が広がった。 ーーー ※三条優紀視点 「…優紀、ここ…」 「あっ、ダメだっ」 「弱いな、太もも」 太ももに舌を這わせチュッとリップ音が聞こえた。 ぞくぞくする…気持ちいい。 冷たい手が太ももを撫でてそのままするっと下着の中に指が入ってきた。 実家に帰るために荷造りをしていたんだけど何故かなかなか会えないからと飛鳥にソファーに押し倒されて今になる。 目線の先には中途半端に開いたバックが見える。 明日だっていうのになかなか進まないなと苦笑いする。 「優紀、脱がすぞ」 「…あ、あぁ」 飛鳥の手が腰に触れる。 俺も散々焦らされたからもう我慢できない。 ……早く、飛鳥がほしい。 物欲しそうな顔をしていたのか飛鳥を見るとニッと笑い唇を合わせた。 ドンドンドンとドアが物凄い早さと強さで叩かれた。 俺は飛鳥の肩を軽く押す。 「なぁ、飛鳥…」 「うるせぇ、ほっとけ」 「いや、でも…近所迷惑だから」 今の時刻は10時で、寝ている人は寝ているだろう。 しかも大声で「優紀!!ゆーうーきー!!」と叫んでいる。 今すぐ止めないと俺達まで恨まれる。 俺は脱ぎ散らかしたズボンを拾い穿く。 その間に飛鳥がかつらを被り玄関に向かった。 ……飛鳥、上半身裸だがいいのか? ドアが開く音と鈍い音が聞こえた。 不思議に思いベルトを締めながら玄関を覗き込む。 いきなり開けたのか、額を押さえてうずくまる始がいた。 飛鳥は怒っているのか腕を組んで始と始を心配する紫乃を見下ろしていた。 「おい、俺見てなにか言う事あるか?」 「…お楽しみ中?」 「殴っていいか?」

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