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第77話

身だしなみを整えて玄関に向かう。 飛鳥にシャツを渡し二人を見た。 確か今日、紫乃と始は明日から実家帰るから見納めで校舎で肝試しをしようと話していた。 俺達も誘われたが飛鳥が即答で「用事があるから」と言って断っていた。 とりあえず玄関で話すのもなんだからリビングに向かった。 …肝試しはやって来たのだろうか。 「二人共、肝試しはどうしたんだ?」 ソファーに座る二人に麦茶を出しながら聞く。 するとみるみる二人は顔を青くする。 …なにかあったのか? 二人は突然俺に飛び付いてくるから押し倒された。 飛鳥に二人は頭を殴られ引き剥がされた。 背中が痛いなと顔をしかめて起き上がる。 「…で、どうしたんだ?口で説明してくれ」 また二人は飛び付こうとしていたから口で言えと先に言った。 飛鳥は興味がないのかソファーに寝転んで雑誌を見ていた。 メンズファッション誌で俺もたまに買ったりしている。 二人は興奮しているのか少々早口で言っていた。 つまり、肝試しをしていたら本物の幽霊がでたと…そう言う事か。 聞いていないと思っていた飛鳥はため息を吐いていた。 「くだらねぇ」 「河原くんは見てないから言えるんだよ!」 「そんなもん気のせいだろ」 全く信じない飛鳥に紫乃はムッとしていた。 俺もそう言うのは信じない性格だが俺まで言うと紫乃は完全に拗ねるかもな。 飛鳥から「さっさと帰れ」オーラが隠しもしないで紫乃達を見た。 俺ももう遅いし帰った方がいいと思うんだけど… しかし気付いているのに紫乃は無視してなにかひらめいたようで手を叩いた。 …これは俺にも分かる、嫌な予感がする。 「そうだ!優紀くん達調べてきてよ!」 「はぁ!?ふざけんな!帰れ!」 「このままじゃ僕達気になって気になって仕方ないんだ!」 飛鳥が怒るのも無理はない。 しかし紫乃が駄々をこねている。 始は紫乃の味方だから俺達にお願いしている。 紫乃の事だから明日になったら忘れてそうだなと思う。 飛鳥と紫乃は言い合っていて、ついには幽霊の正体が分かるまで帰らないと言い出した。 幽霊の正体なんて幽霊じゃないのか?と呆れる。 このままだとらちが明かないな。 「分かった、俺が行く…それでいいだろ?」 「……優紀、ほっとけよ」 「飛鳥は明日早いんだろ?先に寝てていいから」 「………」 紫乃達とはそれなりに付き合いが長いから駄々をこねたら面倒くさいのは分かっている。 俺が行って気がすむならその方が早い。 飛鳥にまで付き合わせられないから俺一人で行こうと思った。 紫乃達に留守番をお願いして早く行って早く帰ろうと思った。 部屋を出たところで振り返る。 興味なかったんじゃないのか? 「飛鳥、部屋に居ていいんだぞ?」 「優紀一人行かせられるかよ、また襲われたらどうするんだ」 俺の学校はどんな学校だと思ってるんだ。 まぁ飛鳥が転校してきて短期間でいろいろあったから仕方ないのかもしれないなと苦笑いする。 心配して着いてきてくれた飛鳥と共に行きたくもない肝試しに向かった。 懐中電灯はないからスマホの光でいいか。 バイトで遅くなったらよくこんな感じの暗い道を歩くが、学校に向かうのは初めてだ。 そもそも開いているのか?紫乃達が入れたなら開いてるんだろうけど… 「…優紀、肝試しって何するんだ?」 「え?飛鳥やった事ないのか?」 子供の頃、誰もが一度は経験してるもんだと思ってた。 まぁ飛鳥はそういうの本当に興味なさそうだからな。 肝試しは暗い場所に向かって度胸を試すものだと教えた。 飛鳥は「…そんな事して楽しいのか?」と疑問だった。 今ならそう思えるが子供の頃はそれが楽しかったからな。 飛鳥はしばらく考えて顔を上げた。 「何の役に立つか分からないが、これも経験か」 「そうだな」 そして飛鳥と歩き、正面は鍵が閉まっているから裏庭の扉から行く事になった。 昼は蒸し暑い太陽だったが今はほどよく涼しい。 木が激しく揺れて、何だか少し不気味に思えた。 裏庭の扉は紫乃の言うとおり開いていた。 ギィと音を響かせるから見回りの警備員に見つかったらヤバイからゆっくりゆっくり開いた。 扉をゆっくりゆっくり閉めている間に飛鳥はスマホの光を着けた。 「行くぞ」 「おう」 静かな廊下を歩く。 確か紫乃達は音楽室で見たって言ってたな。 音楽室の幽霊、なんてベタな展開なんだ。 隣の飛鳥を見ると飛鳥は真剣な顔で考え込んでいた。

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