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第78話

「どうかしたのか?飛鳥」 「…いや、何処かでエロい事出来ねぇかと思って」 「………………お前なぁ」 飛鳥はまだ寸止めがお気に召さなかったらしい。 さすがに夜の学校でヤるほど神経図太くないからな。 飛鳥がキレる前に早く終わらせるか。 確か音楽室の肖像画の目が光ったんだっけ。 ただのライトの光だとは思うが声も聞こえたと言っていた。 …うーん、始か紫乃の声を勘違いしただけじゃないか? 「…おい優紀」 「どうした?学校ではしないからな」 「そうじゃねぇよ、なんか聞こえないか?」 聞こえる?なにが? 足を止めて耳をすましてみる。 すると何処からともなく男の呻き声が聞こえた。 あっちの方向は確か音楽室がある場所だ。 飛鳥と顔を見合わす。 まさかこれが、幽霊? 「声聞いたからもう帰っていいか?」 「いやいや、紫乃は正体が分からないと納得しないだろ」 「……正体って、幽霊は幽霊だろ」 まぁそりゃあそうだけど… でももしかしたら幽霊じゃなくて誰かが倒れているかもしれない。 だとしたら早く助けなきゃいけない。 俺は急いで音楽室に向かった。 後ろからのんびりと飛鳥が歩いてくる。 鍵が閉まっているかと思っていたが、ドアはすんなりと開いた。 「誰かそこにいるのか!?」 「ひぅ!!」 ガラッとドアを開ける。 勢いあまり大きな音を立てたから驚いたみたいだ。 ……驚いた? スマホの光で音楽室を照らす。 黒い影が目の前に見えた。 俺の横から飛鳥が覗き込む。 「…これが、幽霊の正体か」 「みたいだな」 そこにいたのは前髪が長い男…まるで変装飛鳥のような少年が座り込んでいた。 突然俺達がやって来たから怯えた表情を見せている。 こんな夜に何をしているんだ? 少年の傍にはなにかが散乱していた。 それを一つ拾い上げる。 四角いもの…これは… 「CD?」 「あ、それ…」 少年が小さな声を上げる。 そのCDはSTAR RAINのものだった。 なんでここにあるんだ? 飛鳥はジッと少年を見ていた。 他のも全部STAR RAINのCDだったのか。 イヤホンを耳から外している、こんなところで聞いていたのか。 「君、なんでこんなところでCDを聞いているんだ?」 「あ、その…僕…」 なんか挙動不審だな、まさか人に言えない事をやっていたわけじゃないだろうに… 飛鳥は少年を見ていた……というか睨んでいた。 なかなか喋らないし不審者のようだからだろう。 そんな事したら余計喋らないだろう。 飛鳥が見えないように前に立つ。 子供に話しかけるように少年と同じ目線になるようにしゃがみ優しく声を掛ける。 バイトで子供相手をする事があるからお手のものだ。 ……相手は高校生だけど… 制服を着ている、ずっと学校にいたのか? ネクタイの色からして同級生か。 でも見た事ないから隣のクラスとかか? 「君、寮に帰らないのか?」 「……あ、その…寮じゃ同室者に迷惑かけるから」 「迷惑?でもイヤホンで聞いているんじゃないのか?」 「同室者が……僕の笑い声、気持ち悪いって…」 笑い声ってまさかあの呻き声か? 確かにアレがいきなり聞こえたら怖いだろうな。 少年は恥ずかしそうに口を手で覆う。 少年の話によると好きな曲を聞くとにやけて笑ってしまうらしい。 だから同室者に迷惑掛けないようにこんなところで一人で音楽を聞いていたというわけか。 それが幽霊の正体か。 きっと肖像画が光ったのは少年の手元にある懐中電灯と紫乃達が持っていたスマホの光がたまたま重なっただけだろうな。 …これで、幽霊は解決だ……案外簡単だったな。

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