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後書き+α

 後書きを開いていただきありがとうございます。  短編BLまたはMLではあまり構成を練らず、ある程度のキャラクター設定でその時の気分次第で展開が決まるのですが今回ばかりはそれが裏目に出てしまったような気がします。正直ストーリー面では不完全燃焼な部分が否めないのですが、今回は明るく飄々とした会話や人物が書けて楽しかったので一個人としてはプラスマイナスといったところです。  ちなみにメモでは、丹波と花塚は犬猿の仲という設定でした。そして花塚と小西が仲が良いという設定でした。花塚が死んでしまう展開は固定です。  そして今回のキャラクターの名前のモチーフの話をします。丹波は、戦国時代に今の埼玉県にある忍城の城主の家臣・正木丹波守利英(まさきたんばのかみとしひで)から取り、名前は海の都ベネツィアをイメージして付けました。花塚は花の都フランスのパリの漢字表記「巴里」から。余談だが「花嫁」と何度か空目してしまうことが幾度かあったり…。小西は、中国の万里の長城から。  ここで後書きを終えますが、おまけとして丹波×花塚の甘めのパラレルワールドを書こうと思います。あくまでIFルートであり本編ではありません。 それでは当作品を読んでいただきありがとうございました! ↓ ↓ ↓ 「勝手に逝きやがって」  丹波はベッドに寄りかかり目を閉じる花塚の髪に触れる。今朝嫌な夢を見た。なんだか不安になって、だが呑気な姿に理不尽な苛立ちと微かな安堵を感じ、枝毛を勝手に裂きながら気を紛らわす。普段は整髪料のついた固そうだった毛が、洗い落とすと意外にも猫っ毛だった。面倒臭がる頭を引っ掴んでトリートメントをして、髪を引っ張って嫌がる花塚にドライヤーを当てたのはほんの少し前。ペット特集で観た、洗われるのを嫌がる大きな猫のようだった。自分用のトリートメントを使ってしまって今丹波の髪を少し軋んでいるような、摩擦の多いような気がしてならない。 「んぁ、何が?」  まさか返事がくるとは思わず毛先を弄んでいた手を引っ込める。 「寝てたんじゃねぇのかよ」 「いや、寝そうにはなった」  もぞもぞと起き上がる。 「じゃあ寝てろよ」 「おい、まさかオレを寝かせるために来たとか言わねーだろ?」  家を空けることが多いらしい花塚の家に丹波は度々泊まる。少しずつだったが身体の距離も縮まりつつある。男同士での行為は思ったほど上手くはいかなかった。花塚のつらそうな表情や声を聞くのが嫌でつい中断させてしまう。受け止める側1人花塚に全てを任せてしまうのが、気に入らない。 「花塚、俺は別にあんたの身体目当てってワケじゃねぇんだけど」 「…お前がオレの身体目当てじゃねーことくらい分かってる」  花塚は顔を背けてしまう。じゃあなんで、と問おうとして小さく口を開く花塚に言葉を飲み込んだ。 「………オレがお前を欲しいってことは、考えくんねーわけ?」 「あんたさぁ」  丹波は大きく溜息を吐く。男で、自分よりも背が高く、その経歴はあまりよろしいものでもない、ボス猫のようなやつだ。花塚は不安そうに丹波を覗き見る。 「キスするわ」 「っわ…」  花塚の目元を覆って唇を奪う。 「たん、ばぁ…」  柔らかく唇を食んでどちらからともなく舌を絡める。離れた一瞬で、縋り付くように溶けるほど甘い声で呼ばれた。口角にキスし直し、顎と首筋に唇を落とす。鎖骨を甘噛みしながら花塚の寝間着のラグランシャツの裾を捲った。筋肉が程良くのった胸板にも唇を点々と押し付ける。 「…ッぁ」  薄い色をした突起を舐める。最初は擽ったがり身を捩っていたが、控えめに張り詰めている。 「た、んば…ッ」  まるで授乳のようだった。倒錯的な光景を想像して丹波の下腹部にも熱が集まっていく。片側の胸も丹念に指で触れた。 「んぁ、…胸、やめ…、」  花塚は指を噛んでいた。さらさらとした唾液が唇と指の狭間から滴る。丹波がやめろ、と花塚の指を放させる。代わりに丹波と指2本を挿し込んだ。花塚の口内の温かさを感じる。 「や、たんば…」  胸を突き出される。だが無意識らしかった。熱い息を吐いて花塚は丹波の指を舐める。 「ああ…、っ」  固くなり小さく芯を持った先端を舌で転がした。浅い息。夢の中で儚く生き絶えた姿に堪らず花塚を抱き締める。呼吸の度に微かに揺れる花塚の肩の上に顎を乗せた。 「丹波…?」  迷った。 「…っ、好き、だ」  花塚の手が丹波の後頭部に回る。トリートメントをしていない髪はいつもよりも固い音がした。花塚の腕の中は温かい。優しい手付きに泣きそうになった。花塚の背中に腕を回した。顔が見えないことが幸いだ。きちんと癇癪がある。筋肉質でしなやかに跳ね返る、自分よりもしっかりした身体。目の前にいる。失ったら悲しいと、曖昧で漠然としたものとは違う、明確な悲しみを覚えてしまった。この男に。  花塚が丹波を放し、立ち上がり、丹波の両脚へ頭を埋めた。下半身の物を脱がされ、わずかに反応のあるものを花塚は口に含んだ。 「はなつか」  返事の代わりに茎に舌が這った。頭の中のずっと奥からふわりとした靄がかかり始める。両脚を閉じようとして花塚の身体を締めてしまう。なんだとばかりに花塚が舌を茎に絡めたまま丹波を見上げた。なんでもないと首を振る。花塚の口の中で膨らみは育っていく。苦しくなったのか口から出す。 「ちょっと待って」  花塚は部屋を漁り、容器を取り出した。薄いピンクの液体が入っている。容器の中を動く様子から粘度があるそれは何度かここに来て使ったローションだ。初めて見たときくから半分ほどになっていた量に、花塚の遍歴を垣間見てしまっていた。 「花塚…」  花塚は丹波に跨る。掌にローションを垂らす。 「なんて顔してんだ」  パイ投げのように片頬を少量ローションのついた手が叩く。どろりとローションが跳ねた。ムードねぇな、と言おうとして唇を噛んで目を伏せる目の前の花塚に、これがこいつの照れ隠しなのだと悟るとむず痒くなった。 「…っぅ、ん、」  膝立ちで花塚は背中側へ腕を回す。捻った上体。首を伸ばして脇腹にキスをすると身動いだ。片頬のローションを拭った手で半勃ちの花塚の陰茎に触れた。 「なっ、あっ…ぅ」  丹波が慣らすことを花塚は嫌がる。だが自分でやるのも覚束ないようだ。丹波は花塚の前を擦り上げながら素肌を甘噛みする。 「あ…ぁあ、…ふ、」 「俺がやろうか」  喋るのが億劫なのか首を強く振る。 「いいって、やるから」 「お前が、やる、と…っ、すぐイっ…」  花塚の細いとはいえない引き締まった腰を抱き寄せる。 「いいから。イっていいから」  花塚をベッドに座らせた。有無を言わせずローションで濡れた蕾に指を当てる。 「ぁっ、な、あァ…は、」  膜が強く指を締めた。凹凸した感覚がある。空いた手で前を扱く。 「あ…たんば…た、んば…」  首を起こして丹波を見つめる潤んだ目。言葉を覚えたてた子供のような拙い口。普段の姿のギャップに胸が切なく締め付けられる。前を扱く度に腰が持ち上がる。 「ああっ、…ッ!」  花塚の身体が弛緩する。ひく、と日の当たらない皮膚が引き連れた。 「たん、ば…たんば、ぁっ、」 「イっていいって」  花塚は首を振る。丹波が手入れした髪がふわふわとシーツや空を躍る。解れているが、丹波としてはもう少し慣らしておきたかった。 「たんばの…で…イき…ッあああァ!」  丹波は頭が真っ白になって、そのまま挿入してしまう。眉間が引き攣った。何度も丹波を締め付け、もっと奥へと絞る。 「…ッあんたこそ、なんて顔してんだ」 「だってお前とッ…セックスしてる…っ、」  花塚は丹波が着ているシャツの胸元を握り締める。花塚から借りたシャツを丹波が着てみせた時、暫く花塚は丹波を見ようとはしなかった。その表情を思い出す。胸が熱い。花塚が自分に向けるものに、気付いてしまった。強く締め付けられ丹波は息を飲む。 「巴」  花塚の耳の裏を何度も髪を梳きながら撫で付けながら腰を打ち付ける。 「あっ、っん、あっ、あァっ…、」  若さに焦れ、想いの通じてしまった2人の限界はすぐだった。離れようとした丹波を花塚は許さなかった。 「ゴムしてないから…っ」 「いいから、いいって…っ、」  花塚は丹波の顔を捕らえて額と額を当てあった。下半身を震わせる。 「…っ」  花塚の身体が跳ねる。押え付けるようにお互い背に腕を回して、2人の胸が合わさった。汗ばんでいる。 「もうあんたのこと、離せないから、な?」  花塚が目を眇めて笑う。 「オレもお前から、離れねーからな」  丹波の唇が花塚に吸い寄せられた。 fin.

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