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バレンタインデー・ラブトラブル:まさかの大戦争!?

 ――バレンタイン当日――    朝から学校全体が、そわそわしている雰囲気だった。好きな相手に告白できる特別な日。伸るか反るかの大勝負。女子はいつも以上に時間をかけてお洒落に気を配り、男子はチョコが貰えるかどうかを気にしていた。  いつもならチョコなんて貰えないことがわかっているから、気にも止めないのに、肌でそれをビンビンに感じているせいで、僕まで同じようにそわそわするなんて、思いもしなかった。 (吉川にどうやって、チョコを渡そうかなぁ。美味しいって喜んでくれるかなぁ。あー、緊張するなぁ)  などとチョコを持ってきている女子と同じ思考をしているのを、僕は知らなかった。 「ノリト悪いけど、ちょっと手伝ってくれ」  隣の席にいる淳くんが声をかけてきたので、思考を停止するなり横を見てみると。 「うわっ! 何そのチョコの量!?」    まだお昼時である。それなのに淳くんの机の上には、これでもかという量のチョコが、なだれるように載せられているではないか! 「お返しはしないって言ってるんだけど、いつもこれくらい貰っちゃうんだ。この紙袋に入れるの、手伝ってくれ」 「わかった。しばらくはチョコに、不自由しなくて済むね」  恐れおののきながら、淳くんが用意していた紙袋に一つ一つ丁寧に入れた。包装紙の包み具合で、手作りとそうじゃないのが何となく手応えでわかる。ちょうど半分、半分の割合って感じだった 「ノリト聞いて驚け。吉川ってば俺よりも貰っていて、ちゃんとお返ししていたんだから、たいしたヤツだよな」 「はぁ、そうなんだ。やっぱすごい人を、恋人にしちゃったんだね僕……」  何となくだけど申し訳ない気持ちになりながら、チョコの箱に手を伸ばしたとき。 「おーい、ノリト! おまえにも、春がやってきたかも知れんぞ。女子がお呼びだよん!」  クラスでお笑い担当しているヤツが、ニヤけながら僕を手招きした。ウッとなりながら緊張すると、淳くんが肘でツンツン突ついてくる。 「ノリトが初めてチョコが貰えるかもしれない奇跡の瞬間を、大隅さんと一緒にばっちり観察するぞ!」  なぁんて言って、淳くんは足早に教室を出て行った。  どうしよう……当たり前だけど、断らないといけない。僕には吉川という、れっきとしたカッコイイ恋人がいるんだから。 (――断る! 断らなくてはならない!)  そう頭の中でリピートしまくり、ゆっくりとした足取りで廊下に出てみた。 「椎名くんっ、突然すみません!」  丁寧に頭を下げてきた女子。よく見てみると、吉川と同じクラスのコだった。

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