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バレンタインデー・ラブトラブル:まさかの噂話!?②

***  放課後急いで荷物をまとめる僕に、淳くんが声をかけてきた。 「ノリト、何だか嬉しそうだね。吉川と何かあったのか?」 「なっ、何で?」 「だってー目じりが下がってて、口角がいつもより微妙に上がってる」  それって吉川がしていた、だらしない顔と同じじゃないか。気をつけなければ。 「いつもと変わらないけどね。手作りチョコを作るのが、意外と楽しいせいかな」 「あー、大隅さんといい感じって噂になってる。ノリト、モテモテだ」  その噂、淳くんも知ってたのか。まったく困ったな。 「僕と大隅さんは、普通の友達関係だよ。それよりも、淳くんに頼みがあるんだ」 (――ここはしっかり誤解を解いて、淳くんと大隅さんの関係を少しでも近づけたい!) 「なんだ? 真剣な顔して頼みごとって」 「大隅さんね、淳くんのために手作りチョコを作ってるんだ。淳くんは毎年たくさん貰うのが確定しているけれど、一番最初に大隅さんのチョコを食べて欲しいなと思って」 「一番最初って、どうしてだよ? もしかして惚れ薬でも入ってる?」 「変なものは入ってないって! うーんと……すっごく美味しくできてるんだ。他のチョコが、ぼやけちゃうくらいのレベル!」 (どうしたら、一番最初に食べてもらえるだろうか。説得力なくてごめんよ、大隅さん)  なぜかペンケースを握りしめながら力説する僕の顔を、首を傾げながら見ていた淳くん。 「ノリトがそこまで言うなら、わかった。一番最初に食べてやる」 「ありがとう! 本当にありがとう淳くん。愛情がたくさん詰まってるチョコだから、絶対に美味しいよ。バレンタイン当日が楽しみだね」  背中をバシンと叩いて、嬉しそうに笑いながら足早に去っていくノリトを、淳は苦笑いしながら見送った。 「失恋したばっかの俺に愛情かー……。ノリトってばホント、無駄にお節介焼き」  複雑な心境を抱えつつマイペースに荷物を片付けてから、ゆっくりとした足取りで野球部に向かった。 「しょうがない。ノリトの手作りチョコ大作戦を見守りつつ、俺自身も楽しませてもらおうっと」  ノリトの手作りチョコ大作戦が大戦争になろうとは、この時は誰も予想していなかった。

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