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第1話

僕はどうしようもなく馬鹿だ。 あなたのくれる甘い言葉に、無知な犬のように尻尾を振る。 嘘と分かっていても、耳障りのいい言葉に溺れて 『今すぐ行くね』 なんて返す。 きっと、あなたから見た僕は便利で都合のいい存在なんだ。 予定が入ったとか、仕事が長引くとか。 あなたのくれる『絶対』なんてシャボン玉よりも脆く儚い。 あなたのベットの上。押し倒された視界の隅で、赤いピアスが光った。 『二番手は黙っておきな』 と睨まれた気がした。 君が僕を敵視する必要なんてないんだ。 だって、どうしたって僕は君に敵わないんだから。 髪形も、洋服の趣味も、香水の種類まで真似ても僕は君にはなれない。 どんなに真似しても、あなたは君しか見てなくて、僕のことなんて見てくれない。 悲しいし、虚しいし、悔しいけど、あなたは君のことしか見てないから。 あなたが僕を必要としてくれるのが何よりも嬉しいのに。 そのはずなのに、あなたが僕を見てくれないのがこんなに悲しい。 あなたの首筋を噛んで、消えない傷を残せたなら。 そしたら、あなたは僕のところにいてくれるのかな。 生理的な涙なのか、感情からくる涙なのか分からないけど、 あなたの姿が遠く霞んだ。

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