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モフモフな日々

 翌々日、俺はクタさんに、本当は自分がΩである事や「機能不全」であることを話した。  嘘をついてしまったことを謝ると、クタさんは全然気にしていない様子で、実にあっさり許してくれた。 「Ωでもβでも、ここでは同じようなものです。体質は変わることがありますから」  リス獣人の血をひくクタさんは、獣人世界の常識についていつも淡々と教えてくれるからありがたい。 「波長の合う者同士が一緒にいると、体質が変容したり病が改善されたりしやすいものです」  なるほど。もしかしたら俺の性質も一生このままという訳ではないのかもしれない。  だけど今は、別にこのままでもいいかなあとも思っている。ラグレイドが、今のままのシオでいいと言ってくれるし。  その日は、俺が獣人地区に来てちょうど一か月が経った日で、ラグレイドはいつもよりさらに豪華で美味しそうなご馳走で、一ヶ月記念を祝ってくれた。  ラグレイドの料理はいつも絶品で食が進む。俺はラグレイドの作ってっくれるごはんを食べるようになり、以前よりもすこしだけ肉付きが良くなった。以前が痩せすぎていたというのもあるけれど。ラグレイドはその変化がとても嬉しいと言ってくれる。  俺も少しは料理を練習している。掃除とか洗濯も、たまに教えてもらってやっている。  ラグレイドは教えるのが上手いし、小さなことでも褒めてくれる。だから俺はめきめきと上達中だ。本当だ。  この前は本を見ながら猫の形のクッキーを焼いた。すこし焦げてしまったけれど、意外と上手にできたと思う。 「これは、・・・俺なのか・・・・?」  ラグレイドが感動した様子でそう言うので、実は猫だと言い出せなくなって、黒豹のクッキーだということにしておいた。  ラグレイドはよほど嬉しかったらしく、今でもひとつ棚に飾ったままでいる。カビる前に食べてほしい。  夜は相変わらず一緒に寝ている。  毎晩のように身体中を舐められている。よく飽きないものだと感心してしまう。 「ラグレイド、よほど身体を舐めるのが好きなんだね」   思わず俺がそう言うと、ラグレイドは俺の指に這わせていた舌を止め、むくりと半身を起き上がらせた。 「俺はシオの身体を舐めるのが好きな訳ではなくて、いや、もちろん好きなのだが。シオのこと自体が好きなんだ」  びっくりした。まるで告白みたいだった。  「シオのことが全部好きだ」と騎士が言う。「最初から、初めて目にした時からずっと好きだ」と。  「シオは俺のことをどう思うか」と聞いてくるので、俺も多分ラグレイドが好きだと答えておいた。 「・・・・・たぶん?」  だって、恋愛なんてしたことがないからよく分からない。ただ、ラグレイドと一緒にいると嬉しいし、しあわせだし、黒髪とか素肌とか触りたくなるし、耳とか撫でたくなるし、2人でするキスも気持ちいい。実はしっぽもさわってみたい。  そう答えたら、ぎゅうっと胸に抱き締められて、しばらくそのままなかなか放してくれなかった。  耳やしっぽについては、ベッドの中でなら好きに触ってよい、と許可をもらえた。  ベッドの中でないと駄目なのかと聞いてみたら、急に触られるのは困るから、一応ひとこと断りを入れてほしいという。  もしかしたら、意外と敏感だったりするのだろうか。  腕や腹や胸の肌については、いつでも触ってもいいみたいだ。  明日からさっそく、舐められる勢いに負けず、いっぱい触ってみたいと思う。  モフモフな日々が始まる。  楽しみでならない。  

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