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射的
「あっ、僕あれがしたいです」
「射的か。いいんじゃないか?」
柄にもなく来た夏祭りだけど、意外と楽しい。
それは、こいつと来たからってのもあるかもしれないけど。
「あの黒い犬のぬいぐるみ、あなたにそっくりですね。あれを狙います」
狙いを定めて引き金を引く。
想像よりもはるかに小さい、ないと言ってもいいほどの反動と、パンっという気の抜けた音。
確かにこれなら子供でもできる。
ただ1つ、悔しいのは獲物に落ちる気配がないということ。
一応は当たったのに。
2発目。
力を入れずに狙うだけして打ってみる。
やっぱり当たるのに落ちない。
揺れてはいるのだけれど。
「ほぉ、俺もしてみよう」
最後の3発目がこめられた銃をひょいと取り上げられ、彼が構える。
悔しいが、相変わらず様になる。
彼のうった弾は綺麗に飛んでいった。
「どうぞ?」
余裕な笑みで渡してきたぬいぐるみをさっと奪いとる。
「僕だって、3回目で取ろうとしてたんですからね!?あなたに負けたわけじゃありませんから!」
「はいはい」
「うぅ……でも、ありがとうございます…」
「俺のハニーは本当に可愛いな」
「僕のダーリンだって最高にかっこいいですよ?」
花火の音と共に顔を見合わせクスッと笑いあった。
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