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第34話 してません
押されてムッとして睨み付けたが、いかんいかん。
俺は今、そんな立場にいないのだ。
あくまでも加害者側なんだから、大人しくしおらしくしておかなければ。
俺を押した神はというと、斜め下を見ながら何故か「チッ」と小さく舌打ちしてた。
うん。
俺の前の席のなんちゃってイケメンとは、舌打ち姿も全く違うな。
なんかカッコイイ…俺もやってみたい。
「ちっ」
「あ?おまえ今、舌打ちしただろ?」
俺のヘタクソな舌打ちは失敗したのか上手くいったのか、神の耳に届いていたようだ。
今のタイミングは完璧に失敗だったけど…。
「し、してないしてない!してません!」
両手を眼前で左右に振って否定するけど、さっきの俺みたいに疑いの目を向けてきた。
意味は無くて、ただやってみただけなんだよ~!
ホントなのに!!
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