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第151話
「美味いか?」
「うんっ…」
余りにも早いペースで食べるものだから、アルベールは下手くそながらに、会話を挟みながら朝食を食べさせた。
消化しやすく、食べやすいものを用意させておいたからか、シエルは完食して満足そうに手を合わせた。
「シエル、昼にまた飯を持ってくる。それまで一人で待てるか?」
「うん。待ってる」
「俺が出て行ってから、目を開けろ」
「わ…かった………」
アルベールはシエルが目を瞑っているのを確認し、手錠を掛けて目隠しを外した。
なんとなく逃げないのは分かっているのだが、万一にも逃げ出さないためにだ。
不安そうな顔をするシエルの頭をポンと叩いてから部屋を出て行った。
扉が閉まる音がして、シエルはゆっくり目を開いた。
心臓がばくばくと大きな音を立てて鳴っている。
まさかアルベールに頭を撫でてもらえるなんて思いもしなかったのだ。
自分の体を見下ろすと、先ほど着せられていたのはアルベールのシャツだった。
アルベールの身長に合わせて作られたシャツは、シエルにとっては大きすぎて、それ一枚でワンピースのようになってしまうほどだった。
シエルはアルベールの服を着せてもらったことが幸せで堪らなくて、何度も匂いを嗅いだり、服ごと自分を抱きしめたりしていた。
「す………き…、…す…き……、すき…っ」
シエルの中でだんだんと膨らんでいく感情は、もう止めることなんてできず、恋心と憎しみのジレンマに陥った。
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