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第150話

「ふ………くちゅっ!」 アルベールが朝食を食べさせようと、シエルの脇に手を入れて座らせると、シエルはムズムズと顔を顰めてくしゃみをした。 シエルの体はひんやりとしていて、微かに震えている。 「寒いか?」 「わか……なぃ……」 アルベールはなるべく声のトーンを和らげて聞いた。 シエルはずっと服を着せていなかったために、感覚が麻痺して、今が寒いかどうかも曖昧なようだった。 アルベールはシエルに毛布をかけて部屋を出て行き、5分と経たないうちに戻ってきた。 周りで何が行われているか全く分からないシエルは、ビクビクと体を震わせた。 隣にアルベールが座った気配がしてすぐ、シエルは背中から何かを掛けられた。 「それ着てろ。何も着てないよりはマシだ」 シエルは手探りで掛けられた服を身につけ、アルベールの気配がある方に体を向け、頭を下げた。 「あ…、ありがと……ございます…」 「あいつのとこなら、もっと良いもの着せてもらってたんだろ」 「でも……嬉しぃ…です…」 アルベールは憎まれ口を叩くが、シエルは気にせずに嬉しそうに服の裾を掴み、にこにこと微笑んでいた。 「ほら、食うぞ。口開けろ」 アルベールはシエルの小さい口に、少し乱雑ではあるが、ヨーグルトとフルーツをスプーンに乗せて押し込んだ。 シエルはもぐもぐと咀嚼し、強請るようにまた口を開いた。

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