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第149話
その時、何処からともなく、「グギュルルゥゥ」とお腹の鳴る音が聞こえ、アルベールとシエルは言葉を失った。
「今の……なに?」
「おまえだろ」
「僕……?」
「昨日何も食ってないんだろ。朝食用意してやるから、ここで待ってろ」
アルベールは裾を握っていたシエルの手を離させ、部屋を出ていった。
シエルは自分で目隠しを外し、きらきらと射す朝の日差しに目を細めた。
ベッドにはほんの僅かだが、アルベールの熱が残っており、シエルはそれに縋るようにシーツを撫でた。
アルベールに添い寝してもらうなんて、片手で数えられるほどしかなくて、久しぶりに優しくしてもらっている現実がどうにも信じられず、夢見心地であった。
まだ、朝と夜は冷たい風が吹き、一糸纏わぬシエルは寒さに身を震わせ、布団に身を包んだ。
その時、先ほど部屋を出て行ったアルベールが、お盆を持って部屋に戻ってきた。
アルベールを視界に入れたシエルは、また硬直し、ガチガチと歯を鳴らした。
「なんで目隠しを外す?怖いくせに、馬鹿なのか?」
アルベールは呆れたように目隠しを拾い、シエルの目元にくくりつける。
シエルは『怖くない』と言いたかったのだが、どうにも上手く口が開かずに、されるがままになってしまった。
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