186 / 266

第186話

「バルト、おまえは恋してないのか?」 レベッカが他の子供達に腕を引かれ、何処かへ行ったのを見計らって、ゼルはバルトの横に腰を下ろした。 「いないよ。どうして?」 「恋ってのはな〜、いいもんだぞ!」 ゼルは昔からレベッカの弟であるバルトのことも好いていて、まるで自分の弟のように接してくれる、優しい男だ。 バルトもゼルと話すのは楽しくて、こうして、よくレベッカのいない間に、男同士の会話をすることもあった。 「どんなところがいいの?」 「そりゃあ、なんてったってまず幸せなんだよなぁ。あいつの笑顔見るたびに、俺もすっげぇ幸せになるし。バルトはそういう奴いない?」 「んー、いないかな。それって、男の子でもいいの?」 「バカ言え!女に決まってるだろ!!守ってやりたくなるだろーが!!あの柔らかい体ったら、たまんねぇぜ……」 「……キモ。姉様に言っとこ」 途中から惚気に変わり出したゼルに、バルトは白い目を向け、その場を去ろうとしたが、思い切り腕を後ろに引かれた。 「うぉおおい!!駄目だって!今のは冗談!!そりゃあ、レベッカにアレやコレやしたいことは沢山あるけど!!いってぇーーー!!!」 「バカーーーー!!!!バルトになんてこと言ってんのよーー!!!」 子供達と遊んでいたはずのレベッカが、流星の如く駆け寄って、ゼルの頭を殴った。 うるさい毎日だけど、みんなの笑顔が見れるからいいや。 こんな人生も悪くないな、 そう思ったバルトを含め、この幸せな日々は長くは続かなかった。

ともだちにシェアしよう!