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第186話
「バルト、おまえは恋してないのか?」
レベッカが他の子供達に腕を引かれ、何処かへ行ったのを見計らって、ゼルはバルトの横に腰を下ろした。
「いないよ。どうして?」
「恋ってのはな〜、いいもんだぞ!」
ゼルは昔からレベッカの弟であるバルトのことも好いていて、まるで自分の弟のように接してくれる、優しい男だ。
バルトもゼルと話すのは楽しくて、こうして、よくレベッカのいない間に、男同士の会話をすることもあった。
「どんなところがいいの?」
「そりゃあ、なんてったってまず幸せなんだよなぁ。あいつの笑顔見るたびに、俺もすっげぇ幸せになるし。バルトはそういう奴いない?」
「んー、いないかな。それって、男の子でもいいの?」
「バカ言え!女に決まってるだろ!!守ってやりたくなるだろーが!!あの柔らかい体ったら、たまんねぇぜ……」
「……キモ。姉様に言っとこ」
途中から惚気に変わり出したゼルに、バルトは白い目を向け、その場を去ろうとしたが、思い切り腕を後ろに引かれた。
「うぉおおい!!駄目だって!今のは冗談!!そりゃあ、レベッカにアレやコレやしたいことは沢山あるけど!!いってぇーーー!!!」
「バカーーーー!!!!バルトになんてこと言ってんのよーー!!!」
子供達と遊んでいたはずのレベッカが、流星の如く駆け寄って、ゼルの頭を殴った。
うるさい毎日だけど、みんなの笑顔が見れるからいいや。
こんな人生も悪くないな、
そう思ったバルトを含め、この幸せな日々は長くは続かなかった。
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