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第187話

「ただいま」 「おかえり、レベッカ、バルト。もうすぐカルバン王がお見えになるから、急いで着替えなさい」 家に帰ると、母親はせかせかとご馳走の準備をしていた。 ここ最近来るようになったのは、大きな国を所有していることで有名な、カルバン王だ。 なんでも下町と関わりを持つ貴族がいると噂を聞いて、物珍しさにわざわざ王自ら足を運び、その際に気に入って、何度もお見えになるようになったらしい。 ペリグレットを統治しているヴィクトリア王とも親しい仲のようで、この国へ入るのは容易なことであったようだ。 カルバン王のおかげで、近くに住む貴族たちも、下町との関わりを持とうとしたり、いい傾向が見られるようになった。 しかし、カルバン王が来る日はレベッカの表情は毎回暗くなり、バルトはあまりカルバン王が来ることを嬉しく思っていなかった。 そして夕刻、カルバン王が来訪した。 カルバン王は50歳そこそこの、偉そうで太った中年のおじ様だ。 自分の地位を利用して、綺麗な女性を侍らせているとの悪い噂もよく耳にするが、やはり立場上反抗はできないようで、来訪するたび何度もご馳走を出していた。 「レベッカ、また綺麗になったかい?もう少し近くで、顔を見せておくれ」 カルバン王に手招きされ、レベッカは嫌悪感を漂わせながら近付いた。 「ぁっ………」 「レベッカ、どうした?」 「お…父様……、何も…ありませんわ…」 いつも呼ばれるたびに泣きそうな姉の表情が気になって、バルトは少し座る位置を変えた。 するとそこから見えたのは、机で死角になっている場所で、レベッカのスカートの裾から手を入れるカルバン王の姿だった。

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