188 / 266
第188話
カルバン王が帰国したことを確認し、バルトは姉の腕を引っ張り、自分の部屋へ入って鍵を閉めた。
「姉様!あんな事されてるなんて、僕知らなかったよ!!どうして、父様や母様に言わないの?!」
「バルト……」
「あんなおじさんに触られて、気持ち悪くないわけないよね?!父様なら、きっとなんとかしてくれるよ!!ちゃんと酷いことされてるって言わなくちゃ…!」
「いいの、バルト。いくら私達が貴族でも、王様なんかに逆らったらお終いよ。あれくらい平気だから、ね?」
「でもっ……」
レベッカはまだ何か言いたげなバルトを宥めて、自室に戻っていった。
カルバン王の来訪日は日に日に増えてゆき、カルバン王が来訪した日の夜には、レベッカの部屋から啜り泣く声が聞こえていた。
バルトは何度も、両親にそのことを伝えようとしたが、その度にレベッカに邪魔をされて、結局言うことはできなかった。
そしてある日、王はレベッカが抵抗しないのをいいことに、一度だけ部屋に上がり込んだ。
その日からレベッカの笑顔が消え、下町にも顔を出さなくなったことを、バルトは今でも鮮明に覚えている。
12歳の幼いバルトには、その日何が起こったかなんて想像もつかなかった。
しかし今ならわかる。
姉から笑顔が消えた理由も、
突然下町に行かなくなった理由も。
レベッカはカルバン王に、
女としての全てを奪われたのだ。
ともだちにシェアしよう!