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第189話

レベッカから笑顔が消えた三年後、 あれから王はぱったりと姿を見せなくなった。 バルトも下町に行くことは少なくなり、日中はずっと英才教育を受けて、親の後を継ぐための知識を学んでいた。 両親は心を閉ざしたレベッカを心配して、部屋の前に食事を持って行くたびに、扉に向かって声をかけていた。 今日はレベッカの誕生日、 レベッカは20歳になる。 貴族の令嬢はみんな、20歳には他の子息と結婚に至るのだが、この三年間部屋から出なかったレベッカに、出会いなどあるはずもなかった。 バルトは何度か下町に行っていたが、ゼルは父親の元で勉強しなければならないと町に顔を出すことはなくなり、二人の恋も自然に消滅したのだと思っていた。 「レベッカ、もうあなたも大人になるのね。 何があったか分からないけど、お父さんもお母さんもあなたを支えるから、絶対に守るから。 どうか出てきてくれないかしら?」 母は涙を流しながら、ドア越しにレベッカへそう言った。 もうレベッカと会えることはないのか。 部屋の前に佇む母から目を背けた時、家の外から大きな何かを叫ぶ声が聞こえた。 「レベッカ!!遅くなってすまない! 君を迎えにきた!!俺と、結婚しよう!!」 バルトが何事かと急いで外に出ると、レベッカの部屋の窓へ向かって、大声を張り上げていたのは、三年間姿を見せなかったゼルだった。

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