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第190話
周りの家からは野次馬が集まり、下町の人間であるゼルを見た貴族たちは、ゼルに向かって卵や石を投げつけたり、大声で罵声を浴びせたりした。
それでもゼルはレベッカへと思いの丈を伝えた。
もう無理だと、バルトがゼルを止めようとした瞬間、レベッカの部屋の窓が開いた。
「ゼ…ル……」
「レベッカ!!!」
バルトでさえ久々に見たレベッカの顔は、三年前よりもかなり痩せこけていて、窓越しにわずかに見える腕や体も、肉付きはなく、げっそりとしていた。
ゼルはバルトに一声かけてから家の中へ入り、レベッカの部屋の扉を叩いた。
すると、三年間全く出てこようともしなかったレベッカが、部屋の扉を開いたのだ。
「ゼル……、私……、私ね……」
「会いたかった……!!」
ぽろぽろと涙を流すレベッカを、ゼルは折れてしまうほどきつく抱きしめた。
そして跪き、レベッカの左手をとって薬指にキスをした。
「俺と結婚してくれ、レベッカ」
ゼルが指輪を差し出して愛の言葉を述べると、レベッカは嬉しさと罪悪感で泣き崩れた。
「私、もうゼルに会う資格なんてないの…。私、三年前……っ」
「何も言わなくていい。大丈夫。
これからは俺が守るから……」
「ゼル…ッ」
こうして二人は結婚し、幸せになった。
………なんて、
そんなハッピーエンドで終わるわけがなかった。
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