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その36高級スーツを買いましょう
オシャレなカフェで、お互いの自慢話を終えて高級レストランへと移動した。その前に、ドレスコードがあるからとスーツを買いに行った。
信之助には到底手の出せない値段のスーツを、佐久良は躊躇なく買った。もちろん自分の分も。信太郎の分は、当たり前のようにフィリップが買っていた。
「ヤバイ。俺、このスーツ家宝にする」
「俺は慣れたなぁ。慣れないと、フィリップバンバン買ってくるし」
「あー。そんな気がする。佐久良は、そんなに買ってこないな。俺がほしいのは自分で買うって知ってるし」
「それいいな。俺も、そんな風にしてもらいたい」
「それより、お前ネクタイ曲がってる。ったくまだキレイに出来ないのか?」
「えへへへ。結んで、信之助」
いつもならフィリップに頼むが、信之助がいるのだ。久しぶりに甘えたくて、ネクタイを差し出す。信之助も久しぶりに信太郎を甘えさせたいから、当たり前のようにネクタイを受け取った。
慣れた手つきで信太郎のネクタイを締めてあげた。日本にいる間は、これを毎日していたからなんだか懐かしい。そんな気持ちが2人共込み上げてきて、自然と笑みがこぼれた。
「あ、たま。もうネクタイ締めてる。俺が締めてあげようと急いで戻ってきたのに」
「信之助にやってもらったからだいじょ………フィリップ。それ、何?」
「何って、たまに似合いそうだから買った」
2人の元に来たフィリップの手には、紙袋がいつくも握られていた。聞けば、信太郎に似合いそうだからと全部買ったものらしい。この店、高級なものしか置いてないのに。全部でいくらぐらいしたんだろうかと、紙袋を見ながら信之助は思った。
しかし、信太郎は本当に慣れているらしく。紙袋の中身を見て、これはいる、あれは返してこいと吟味していた。
「ポチ、見てください!ここには魅力的なネクタイの柄がたくさんあります」
「さ、佐久良!こんな高級な店で、なんちゅー柄のネクタイ選らんでんだ!しかも何でそんな柄がこんな店にあるんだ!」
今までネクタイを選んでいたらしい佐久良が、ダサい柄のネクタイを大量に持って戻ってきた。それを信之助はすべて奪い、もとあった場所に戻してから自分がつけている柄の色違いを持って戻ってきた。
「これにしなさい。俺と同じ柄だから、な」
「さっきの柄の方がいいかと思うんですが、ポチが選んでくれたのでそれにします」
少し残念がりながら、でも笑顔で信之助が選んだネクタイを佐久良は受け取った。
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