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番外編:貴方に逢えたから24

(多分この人は健吾さんが言ってた、創造主様に違いない。どうして、僕の夢の中に現れたんだろう?) 「人を騙して快楽を得ていた男の末路が、こんなふうに様変わりするとは思いもしなかった。お前はさしずめ、聖人君主なのかもしれない」 「聖人君主なんて、とんでもございません。僕はただのありふれた、どこにでもいる男でして……」 「お前が彼奴を真人間にしなければ、今頃どこかでテロを起こされていたんだ。そのせいで、私の仕事が大幅に増えるところだったのだぞ。とても助かった、感謝している」   言いながら男性はしゃがみ込み、僕の躰をぎゅっと抱きしめた。 「わっ!」 「懐かしさはないか? お前はよくこうして、彼奴に抱かれていたろ」   鼻先をくすぐるフローラルな香りと一緒に、男性の温もりが伝わってきて、あたふたしするしかない。 「すみませんっ! 放してください!!」   男性の胸を両腕で押し返し、何とか脱出を試みた。 「暴れるな、彼奴には内緒にしてやる。このままこの躰を、好きにしてもいいのだぞ?」  放れなければと、抵抗する僕の首と腰を強引に抱きすくめて、顔を覗き込みながら誘ってきたことに、驚きを隠せない。 「無理です、ごめんなさい。僕は、貴方様のような偉い方を抱ける身分ではないので!」  渾身の力で男性の躰を押し返しながら、自分なりに説得してみる。 「やれやれ。彼奴に、操を立てているのだろう? お前が、不義理をする男じゃないのは知っている」   男性は笑いながら両腕の力を抜き去り、あっけなく解放してくれた。 「よく耐えたな。この躰は行為を円滑に行うために、男を誘うフェロモンをこれでもかと放出しているのだ」 「それは危なかった……」 「とりあえず、お前の疑問に答えてやろう。私の仕事を減らしてくれた礼として、消し去った記憶を戻してやるために、この場に現れた」  ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、想像を超える展開にぽかんとしてしまった。大したことをしていないというのに、礼を与えるだけのために現れたという男性を、呆けた顔で見つめるのが精一杯だった。
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