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番外編:貴方に逢えたから28
「健吾さんと一緒にいられる理由は、持ち合わせていないものを、互いに持っていたからだと思います。だから僕らは惹かれて、愛し合ったのかなって……」
しどろもどろだったけれど、それなりの理由を口にした途端に、創造主が違和感ありまくりの笑みを唇に浮かべた。
僕が言ったことが気に入らないのか、はたまたツボに入って可笑しかったから微笑んだのか、まったく見当がつかない。
「ほう、なるほどな。彼奴とお前はふたりで一人前だから、離れることができないというわけか。片方がいなくならないように、せいぜい努力するがいい」
「創造主さまには感謝しているんです。健吾さんと、出逢うきっかけを作ってくださったお方なので」
「私からの誘いを断っただけじゃなく、差し上げようとした望みも要らぬばかりか、改まって感謝されるとは」
「ありがとうございます、創造主さま。ぼくは――」
続きのセリフを言う前に、目の前にいる創造主の姿がぐにゃりと歪んだ。
あれっと思った次の瞬間、音もなく躰がどこかへ落ちていく。落ちていきながら慌てて顔を上げると、僕が落ちたらしい穴が月のように白く光り輝いた。
「敦士、大丈夫か!? おいっ!」
聞き覚えのある大きな声にはっとして、落ちていく先を見てみたら、真っ暗闇で何も見えなかった。
「怖い、助けて!」
ありったけの声で叫んだ刹那、拘束されるみたいな痛みを全身に感じた。あまりの痛さに、両目をぎゅっと閉じて息を飲む。
「大丈夫だ、俺がいる。怖いものなんて、どこにもいない!」
「健吾さん……」
恐るおそる目を開けた。飛び込んでくる光はあたたかみを帯びていて、優しさに溢れているように見えた。
そんな光を背後にまとった恋人が、僕の躰をさらにキツく抱きしめる。どこかつらそうな表情で見つめられたことで、心配かけてしまったのが明白だった。
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