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18 〜 シップペーッ 〜
仲直り(?)したはずなのに何だかんだ気まずい…
でも!
お互いにヘタレなのが良く分かった!!
それにおれが男同士に抵抗ない事も分かったから、自分の気持を整理する時間が稼げると思えば問題なし!
…よしっ!
勝手にスッキリしてジェミルの買ってきてくれた朝食を食べて見送りをした。明日からは自分で買いに行くのか。
いつ頃行けば良いのか分からず、エルヴァンにメイクしながら呑気にしていたら今日も馬車が迎えが来た。
うっかり寝間着のまま出てしまったら迎えの人に眉をひそめられた…。ごめんなさい…。
ギルドに着くとヒューリャが良い笑顔で出迎えてくれた。
「おはようございます!ミチル様。
ヒューリャです。あの…昨日はありがとうございました。ぼく…あなた殴ろうとして…恥ずかしいです。」
待って、確かに恥ずかしい事されたけど。
「引っ叩かれても仕方ないのに、何でキスしたの?」
「…だって、その顔を傷つけるなんて出来ないし…あんまり個性的で…ムラっとしちゃって…」
なんだか良く分からないけど、つまり混乱した、と。照れてモジモジしながら言うとか、あざといなー。それにムラっとしたからって仕事中にキスしちゃうのって、どうなの?
って、考えてたらリーダーっぽい人に怒られた。
「ここでは同じ使用人で、しかも新入りです。つけ上がらせるような扱いは慎みなさい。」
「はっ、はいっ!」
リーダーは少しつり目ぎみのキリッとした美人。まずは挨拶だな!
「昨日はきちんとご挨拶も出来ず、失礼いたしました。遠くから来たので知らぬ事ばかりですが、一生懸命頑張りますので、どうかご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。」
こんな感じで良いかな?
「分かりました。まずは身なりを整えなさい。まったく、馬車で送迎なんて特別扱いして…」
あー、やっぱ特別扱いか。
で、身なりを整えるって昨日の服に着替えれば良いのかな?
「ミチル様、どうぞこちらへ。」
「あのぅ、教えを請う身で様付けで呼ばれるのはおかしいと思うのですが…」
「でも、カドリ様がそうお呼びしていましたから…」
そうか、カドリさんは雇い主側だから様付けで呼ぶべきか。
「カドリ様にも皆様にも、呼び捨てにしていただけるようお願いします。」
「それは賢明ね。」
リーダーに褒められたー!
「改めまして、ミチルです。よろしくお願いいたします。」
そう言って丁寧にお辞儀をして、教育係になったヒューリャに連れられて行った所はお風呂場…?
「毎日仕事前に入るの?」
「もちろん!清潔にしておくのが絶対ですから。洗わせていただきます!…ハァハァ…」
「だからやだってば!何で興奮してんの!?」
「いえ、そんな…やましい事なんて…少ししか…」
「昨日見られたけど、見られたくないんだよー!!」
いくら騒いでもヒューリャは意に介さず、しっかり恥ずかしいところまで洗われた…。なんで普通に生えてくれないんだよ!毛根が重力に負けてんのか!?
「いくら先輩でも…」
「どうしておイヤなんですか?」
「だって!変だろ? このせいでみんなからバカにされて…」
「それは妬まれたのですよ、きっと。」
そんなはず無い。こっちの世界とは価値観が違うんだから!!
でも…そうか、こっちでは羨ましがられるのか。なら、バカにされる、って怖がらなくて良いのか。
「これ、みっともなくない?」
「どこで出しても恥ずかしくありません!!」
「いや、そこらで出さないよ!?」
「…出して?」
なぜ撫でる!?
馴れてないんだから、すぐ勃っちゃうでしょ!!
「早くしなさい!!」
リーダーに叱られて渋々おさわりを止めたヒューリャ。キスしたりおさわりしたり、基本的にえっちな子なのかな?
美少年タイプの可愛いさはおいといて、なすがままなおれもどうかと思う。
昨日と同じデザインの服を着て、本日のスケジュールを確認。教わりながらテーブルセッティングをして昼食会の給仕スタート!
今日は昨日の4人の中にいたじーちゃんと剣を腰に下げた見知らぬおじさま。
さっそく先輩達3人が料理を並べ、おれは昨日と同じくお酌をする。
初めは他愛ない会話だったのに徐々に緊張感がでてきた。何の話かな?
不思議に思いながらも何の事を言っているのかさっぱり分からないし、口を挟んじゃいけないんだろうと考えて黙ってお酌をしていた。そんなにかぱかぱ飲んで大丈夫なのかな?
アルコール度数が低いのかこの人達が強いのか分からない。
興味はあるけどこの前のお酒みたいに舐めただけでへろへろになっちゃうと困るなー。
「…で、今日の無理難題を飲む代わりに見せてくれる奇跡が彼か。」
「は?」
「そうじゃ。これほどまでに個性的なかんばせを見た事があるか?」
個性的なかんばせ…褒めてるんだろうけど褒められてる気がしない。
だいたいおれの顔なんて棒人間の顔レベルだろうに、って考えるだけで悲しくなるから止めよう。
「もっと良く見せてくれないか?」
ダンディ極めたおじさまがキラキラエフェクト付きでグラスを差し出した。
リーダーとじーちゃんに目配せで確認を取ってお酌しにいくと、手をボトルごと掴まれて引き寄せられ、くるんと回されて膝抱っこ。…え?
ボトルも取り上げられてて零す心配もなし。
ちょっとこれ、凄くない!?
イケメンはこんな技を持ってるんだぁ。
しかもただ膝に乗せておれの顔を眺めてるだけで何かするでもなく、お酒を飲んでいる。
案外、紳士的?
あ、紳士はいきなり膝抱っこしないよね。騙されるところだった。
それより昼食は?
「セルハン様、いらっしゃる度に新人をからかうのはおやめ下さい。」
「ここの者たちは皆、美しい。親密になりたいと考えるのは当然だろう?」
「それにしてもやりすぎだ!」
リーダーが注意してくれて、じーちゃんがツッコミを入れてくれた。いつもこんな事してるのか。
「早く立ちなさい。」
「でも…その…」
ジタバタしても脚が床につかないようにされてて立てない。
「このままで良いんじゃないか?」
「困ります。」
じーちゃんがおれの手を取ってぐいっと引っ張ってくれた。見た目じーちゃんがだけど、力持ちだな。
「ありがとうございます。」
にっこり笑顔でお礼を言った。
…手を離してくれない。
じーちゃん?これ、商談とかなんじゃないの?
「あの…?」
「このままワシのうちに来んか?ワシなら他の者に頼らずともミチルを守ってやれるぞ?」
「オヤジ!まだ伴侶を増やす気か!!」
どうやらダンディさん(仮)は用心棒の元締めで、さらにじーちゃんは先代元締め、そして親子らしい。
で、今日はただおれを見せたかっただけだって。仲良し親子ー♡
なんかピリピリしてたけど?
「それは野盗討伐の報酬についてだな。1人の素人にやられて逃げられる程度の奴らだと言うのにふっかけおって。」
「野盗を捕まえるのは警備隊の仕事じゃないんですか?」
「町に近ければ警備隊が出る、遠ければ用心棒の出番て訳だ。」
町を守るのが警備隊の仕事だからか。なるほど。
「今回のは相手が弱くても遠い上に隠れ家も人数も特定できていないんだ。調査に人手がいるし、日数もかかる。妥当な金額だろう。」
「調査なんぞ中堅2人程度で調べれば事足りるじゃろう。」
「交代要員が必要だ。まずは調査に1週間、中級4人分で300万タバルだ。」
危険度も相場も分からない…
って言うかそう言うの、ぺらぺら喋っちゃって良いの?
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