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26 〜イーシップホック〜
…化粧品の研究も良いけど、宝石の研磨職人…弟子入りしたいな。
ギルドの仕事がよく分からなくてやりがいが見つけられない。
もっと続ければやりがいが見つかるかも知れないけど、その前に挫折しそう。楽しいんだけどね。
「捨てるやつもらっても良いですか?」
「構わねぇが、怪我すんなよ。」
お弟子さんに革袋に詰めたクズ水晶を持って来させてこんなもんどうすんだ?って聞くから皿に乗せて窓辺に置いて眺めて楽しむって行ったら変な顔された。
「あ、あの!良かったらこれも持って行って下さい!」
「え?良いの?」
「ヘタクソですけど…。」
左右比対称な形は意図的な歪みでない事は明らかだけど、丁寧に磨かれてキラキラしてる。
「きれい…ありがとう!大切にするね。」
って、手を握ってお礼を言ったら他の人達も練習用のクラックやインクルージョンの入った石をカットした物をくれた。
「何貢がせてんの?」
「エル!貢がせてるんじゃなくて練習で磨いたヤツをもらってるの!」
「えー?そんなの価値があるの?」
「眺めて嬉しいんだから価値があるよ!」
「その顔ならキス1つで最高級品だって貢がせる事ができるでしょうに。」
「おれは原石派なの!きれいに磨かれたヤツも良いけど、傷や内包物があった方が個性的でしょ!」
あ、みんなの眼の色が変わった…?
「そうか、そうだな。クラックは割れちまうからダメだがインクルージョンは個性だな。そう言うのを活かしたデザインにしても良いかも知れん。」
職人頭のトリンさんがぶつぶつ言いながら考え事に没頭してしまった。
「良い色のサファイヤが手に入ったのにインクルージョンがあって、そこをカットするとかなり小さくなってしまう、と悩んでたんですよ。」
見習いさんが説明してくれた。
お礼を言ってもトリンさんの耳には入らないようで他の人達にお礼を言って帰った。
「イザーニさんとは仲直りできた?」
「元々ケンカしてた訳じゃないの。ただ…しつこいのよ!快楽漬けはイヤなの!」
あー…研究者だからかな?
エルの良い所を研究しちゃう感じ?
「それは少し控えてもらいたいね。」
「でしょう?今日はベルケルの所に泊るわ。」
「ベルケルさん?」
「ベルケルは私がして欲しい事しかしないのよ♡」
でも1人に絞らないんだね。
「そんな必要ないでしょ?」
「独占欲とかは?」
「私が必要とした時に相手をしてくれれば良いし、それができないなら他へ行くだけよ。」
「それはエルだけ?みんなはどうなの?」
「人と比べてどうするのよ。」
うーん…
悩んでいるうちに馬車が宿舎に着いた。
「こんにちはー。」
エルとは宿舎の前で別れて挨拶をすると、今日はジェミルがいた。
「ジェミル!今日は見回りいいの?」
「…昼間、ケンカの仲裁に入って右手首を痛めてしまって…今夜と明日は休みになった。」
「怪我!?大丈夫?」
「たいした事はないんだが、見回りが怪我をしていると舐められるから見た目が誤摩化せるようになるまでは見回りからは外される。」
確かに、弱点晒している様なものだもんね。それにしても固定されていて不便そう。
「明日、お休みなの?丁度おれも明日は休みだって言われたんだー。ねぇ、外泊できるなら相談に乗って欲しいんだけど、どうかな?」
「副隊長に聞いてみる。」
会食の予定がキャンセルになったから休みなんだって。
副隊長の許可が下りたので今夜はお泊り。
数日なのに久しぶりな感じがする不思議。
夕飯を食べて家に帰る途中、果物屋のメイベに捕まった。
「ミチルっ!なんでハリムの店に来ないんだ!?オレ達が煩かったからか?」
「そう言う訳じゃないけど、今、警備隊宿舎で夕飯食べさせてもらってるんだ。だから他のお店に行かなかったの。」
「イヤじゃないなら今から飲もう!」
「イヤじゃないけど、ジェミルが怪我してるからお酒は…」
「俺なら大丈夫だ。」
メイベの必死さに絆されたのか、ジェミルがそう言うのでハリムさんの店に行く事になった。そして行ったらハリムさんに苦情を言われた…。
「ミチルが来るのを期待して来た客が大して注文せずに長居して行くんだ。お前のせいじゃないが、たまには来てくれ。ずっとタダで良いから!」
「そう言う事なら週に2回は来られるかな?」
ジェミルとエニスの休みの前日なら来ても良いよね。あ、もしかしたら隊長もOK?
「連れもタダにしてくれるなら!」
「あー…連れは1人までな。それ以上は金取るぞ。」
「はーい!」
充分です!
‥‥‥奢られる事に馴れ過ぎてしまったかも知れない‥‥‥。
まぁ良いか、といそいそと席について薄いお酒を作ってもらう。さらにメイベが果物をくれた。
「おいしい!ありがとう!!」
「それだけ美味そうに食ってくれたら果物屋冥利に尽きるってもんだ!」
大げさだけど、そう言う事がやりがいに繋がるんだよね。
「そうだ。教えて欲しいんだけど、複数の人と付き合うのってどう思う?」
「恋人とか伴侶ってことか?気が合うなら良いんじゃないか?」
「1人で守るには限界があるから、大切な人ほど複数で守る方が安心かな?」
ジェミルもそうなの?
「独占欲とかないの?」
「あるが…1番になりたいだけで他と付き合うのを禁止はできないな。」
「けど、オレ達みたいな型押しは捨てられる可能性が高いからなぁ。」
「その不安は捨てきれないな。」
「…もしおれが複数と付き合っても、ジェミルは気にならない?」
「今も言った通り、捨てられる不安が付きまとうが‥‥‥四六時中一緒にいられる訳じゃないからできれば俺と仕事の時間帯の違うヤツだと嬉しいかな。それに…」
「それに?」
「ミチル程の個性を俺なんかが独り占めするべきじゃないと思うんだ。」
「分かる!分かるぞぉ!!飲め!お前も飲め!!」
怪我してるのにお酒飲んで良いのかな?
心配だから薄めにしてもらうよう、頼んだ。
「えへへ…おれの育った所ではさ、1対1で付き合うのが当たり前でさ、1人に絞らないのは悪いこと!って言う感じだったし、本気で好きな人としか肌を重ねちゃダメ…って思われてて…そうじゃない人もいたけど、罪悪感が植え付けられてるんだよねぇ。」
「それはまた…肌を重ねてから気づく相性もあるだろう?」
「まぁね。それで別れたりするのは良いの。ただ同時に何人も比べるような事するのは失礼なんだ。」
「確かに比べられるのは嫌だな。」
「けどよ!それぞれの良い所を見つけてくれるなら良いよな。」
おおらかな考え方だなぁ。
「ふふふ…メイベは友達だからこれくらいまでかな?」
ほっぺちゅーだな。
「おおお俺もしていいか!?」
「良いよ。」
頬を差し出すとぎこちないキスを返された。
けっこう酔ってしまったので帰る事にした。
店にいた知らない人達と握手をして回って帰るとか、完全に酔っ払いです。
「風呂の用意するよ。」
「怪我人は大人しく座ってて?そうだ、一緒に入る?」
「それは!!…その…」
「今夜はエル、帰って来ないよ。ベルケルさんの所に泊るって。」
「けど…」
「ねぇ、おれ結構ジェミルの事好きなんだ。こっちに来て会った人の中で1番好き。でも恋愛の好きなのか友達としての好きなのか分からなくて…戸惑ってたんだけど。」
「ジェミルと気持良い事、したい…」
ぎゅっと抱きついて胸に顔を埋めてそう言ったら、ジェミルのモノが硬くなって、おれのお腹を押した。
…足の長さの違いがはっきり分かります。
酔った勢いでごめんね?
流されちゃって良いよね?
「ふ…風呂の準備をして来る…!!」
水を汲みに行ったジェミルを見送ってもらって来た火種で火を起こし、石を加熱する。風呂は狭いけど、ゆっくり入れるように少しぬるめにしようと考えた。
あれ?結局お風呂の用意してもらってる?
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