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第1話
幼い頃から、珠樹 との記憶は途切れる事なく続いている。
それでも。いや、それだからこそ。
彼の口から放たれる言葉を、佑は想像する事すら出来なかった。
「佑 ……僕……!」
大きな声で呼び止められ、後ろを振り返る。ざあっと風が吹いて、髪がなびいて、木々がざわめきあって、でもそんな音をかき消すように、珠樹は声をはり上げた。
「佑の事が好きなんだ……!」
は……? 何言ってんの?
一瞬体が固まる。何かの冗談かと思い、笑みの形に歪んだ佑の頰が引きつった。冗談を言っているようには見えなかったからだ。血の気が失せて真っ白になった顔は、何かを決意して、震えながら挑んでいるように見えた。
そんな珠樹の表情が曇る。何かをあきらめたように俯いてしまった。
「ごめん、気持ち悪いよね」
珠樹は震える声で小さく呟く。
佑は困ったように首に手をやった。
「別に」
珠樹は勢いよく顔を上げて、中途半端に歪んだ表情で佑を見つめる。
「え……」
佑は軽く目をふせる。泣いているのか笑っているのかわからないような、無理をしている珠樹の表情を見ていられなくて、目をそらせた。
「じゃあ……」
声のトーンが上がって、作り物ではない珠樹の笑顔がにじみ出た瞬間、佑は遮るように言葉を重ねた。
「じゃあ、じゃねーよ。気持ち悪くないのと、俺がお前の事を好きかどうかは別だろ。俺は女が好きなの」
「そう、だよね……」
へにゃりと悲しみに歪んでしまった笑みと、下げられた眉尻。そんな珠樹の表情から再び目を背けるように、佑は帰路を見つめた。
「とりあえず、こんなとこで大声出すな。帰ったら聞いてやるから」
歩を進めると、珠樹は戸惑った表情で佑の後をついてきた。
笑い話にもならねえ。
女にフラれた日、俺は男に告白された。
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