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第7話

「おはよう」とぼそぼそと声を出すと、佑はちらりと珠樹を見た。  珠樹は満面の笑顔だ。にこにこと「おはよう」と返してくるものの、いつもと何も変わらない。  自分だけびくびくとして、様子をうかがっているのが少し馬鹿らしくなった。  肩を並べると、黙ったまま歩く。珠樹は何も言わなかった。  昨日さっさと帰ってしまった事と関係があるのだろうかと、佑は怯えていた。  今になって、何もなかったことにされると困る。また自分勝手な事を考えながら、もう一度ちらりと珠樹を横目で見た。 「なあ、あのさ……」 「ん?」 「いや、その……」 「あ!」  がばりとこちらを向いて、えへへと笑った。 「キスしたい?」 「いや、え?」  ちょうど公園の横を通りかかって、ぐいと腕をつかまれた。 「ちょ、ま……」  ぐいぐいと引っ張りながらずんずんと公園へ入っていく。どうも立ち入ってはいけない場所のような気がする、木が植えられている茂みの中へずかずかと入っていった。  ああ、いつもの珠樹だ。  と、安心した。襲われようとしているのに、安心するのもおかしな話だが、それでも佑は、昨日のことが珠樹の中で無かったことにはされていない様で安堵した。 半ばまで歩き、ちょうど周りから見えないようになっているところで、木に押し付けられる。  顔を寄せてくる珠樹をちらりと見て、佑は目を閉じた。  ぴくんと珠樹の体が跳ねた。  いつも不本意そうに眉を顰めているだけだったのに。  今、受け入れるように目を閉じている。  珠樹はふるふると体を震わせて、頰を緩めてにやけながらそっとキスをした。  唇を離している時間を惜しむように何度も口づけてくる。舌を入れようと歯列をなぞられ、佑は迎え入れるように隙間を開けると、差し込まれた舌を、噛んだ。 「いっ!?」 「これ以上するとお前勃つだろ、バカ」  少し頰を赤く染めて佑が睨み付けると、珠樹はびくんと姿勢を正した。 「え、何?」  びくりと佑も身を引く。 「…………勃っちゃった」  えへへと笑って佑に抱きついて来ようとする。 「えへへじゃねーよ、バカ」  軽く頭を叩き、「俺知らねー」とさっさと歩き出した。 「待ってよー……」  珠樹の情けない声を背に受ける。  少しぐらいその先の相手をしてやってもいいかな、なんて、珠樹には絶対言ってやるもんか。  まあやるんなら、俺が上だけどな。

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