2 / 145
《BOUSへ…》
12月末の日曜日、昼過ぎ。
アキラがみずきのアパートで一緒に暮らしはじめて1ヶ月ほどが経つ…
今日は昼の仕事が休みだったみずき。
アキラと2人、のんびりした時を過ごしていた。
「じゃ、そろそろ行こうかな…」
アキラは、そう呟いて重い腰を上げる。
「あぁ…」
みずきも無表情でアキラの足元をチラッと見て、立ち上がる。
そしてアキラのリュックを取ってくるみずき。
なんとなく不機嫌そうなみずきをみるアキラ…
普通を装っているけど…
やっぱり機嫌よく送り出してはくれないよな…
そう思いながらリュックを受け取る。
「…送っていこうか?」
みずきの言葉に軽く首を振るアキラ。
「いいよ、もうタクシー呼んでるから」
今からアキラが行くトコロは…BOUS。
今日はバイトの日なのだ…。
アキラが行っているバイトBOUSとは…
法的にかなりヤバめのお仕事。
みずきもそこの卒業生だ。
「…そうか。なら、終わる頃に迎えにいくから…」
みずきは、真剣にアキラへいう。
「別にいいって、いつ終わるかわかんねーし、それに夜仕事なんだろ?みずき」
また断るアキラ。
「…仕事、23時には終わるから…それからなら迎えにいける。着いたらメールするから…」
「…あのな、すぐにすぐ出ていけるとはかぎらないんだから…来るなよ、心配しなくても、最悪、朝までには帰るよ…」
「…朝」
アキラがBOUSバイトに行く時…
みずきは昼仕事でいないことがほとんどで…
しかも、アキラは、当日BOUSバイトに行くことさえ言わずに行ってしまうので、仕事から帰ったらアキラがいなくてメモだけ置いてある…なんてことが何度かあって、ヒヤヒヤさせられるのだ。
そして、そのほとんどが朝帰り…
アキラにBOUSの撮影をさせるだけでも嫌なみずき。
BOUSから朝帰りなんかされたら…
撮影以外にも誰か他の奴と…と勘ぐってひとりで意気消沈して眠れなくなる。
アキラを迎えに行って、連れて帰ればそんな心配はないから…
アキラは、ひとつ大きく息をついてみずきにいう。
「あのなぁ、お前だってBOUSで働いてたんだから分かるだろ、割り切ってたんじゃないのか?」
アキラの言葉に苦しげに頷く。
「なら、BOUSのことには首を突っ込むなよ…わかった?」
アキラは言い聞かすように伝えるが…
「しかし…」
また難色を示す。
そんな心配性のみずきを見て…
やれやれと息を付いて…
「…それとも、もう一度BOUSの門をくぐって終撮の相手役してくれるのか?」
雰囲気を変えるように、少しからかい口調で笑って伝える。
「終撮?」
みずきは驚いて聞き返す。
ともだちにシェアしよう!