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第8話

「いえいえ、お役に立てて光栄ッス…」 頭をかきながら照れるカズキ。 その姿をかわいいな…と思いながらアキラは… 「オレはこのままトップのトコ行くから、カズキは帰っていいよ…」 そう促すと… 「せっかくだからトップの部屋まで送るッスよ…」 トップ(社長)の部屋の周辺はほとんど人が通ることないので付き添いは必要ないのだけれど… 「…ま、いいか…送ったらちゃんと帰れよ…」 そう頷く。 「はい!」 嬉しそうに微笑む。 真意は定かでないけど、気に入られてるのは確かなので悪い気はしないアキラ。 カズキを連れてトップの部屋へ通じる廊下までくる。 途中から…2人を追ってくるひとつの人影に気付くことなく…。 「ここまででいいよ…ありがとう。カズキ…ちょっと…」 アキラはもう一度お礼をいいながら、カズキの後頭部に手をあて…屈むように促す。 カズキがすっと頭を屈めると、そっとその唇へ優しく口づけする。 「…サクヤセンパイ…」 唇が離れると驚いたように呟くカズキ。 「今日の礼…もの足りないだろうけど、今はこれで勘弁な…」 柔らかくほほ笑みながらアキラはいう。 「いえっ充分っす!」 赤くなりながら答える。 「はは…面白いやつ」 アキラは、クスクス笑ってしまう。 「あの…もう、当分撮影ないっすよね…」 「そうだろうな…」 微妙に首を傾げ頷く。 「コレ…俺のケータイ番号とアドレスっす、フリーになった時には連絡くれると嬉しいッス!」 「え…あ」 名刺カードを手渡し、返すタイミングもあたえず走り去っていくカズキ。 「ふ、元気な奴だな…」 アキラは感心しながら、とりあえずリュックの中に名刺をしまいこんで、トップの部屋の前までくる。 軽く戸をノックをする。 「はい、どうぞ入り…」 トップの声… 「失礼します」 入ってきたアキラの顔をみたトップは…顔をしかめる。 「…サクちゃんか、また、例の話かい…」 気乗りしなさそうにトップがぼやく。 「はい…」 頷いて立ち止まる。 「まぁ。そこに座りぃ」 呼ばれて…ソファに座るアキラ。

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