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第10話
「サクちゃん、あと2年なんだ。見たところ、そんなに悪そうには見えんしね、NGだって今にはじまった事じゃない…君は人気上位ランクだし…まだまだ売れる、頑張ってみないかね…」
さとすように言うトップ。
「…それは、撮影の時は薬を飲んでいるから…。体調的にも…オレはこれ以上、続けられる自信がない。お願いします、辞めさせてください…」
毎回、副作用の強い薬で麻痺や発作を抑えて、キツい撮影をして…
身体に負担をかけて…
そんなことを後2年も続けていたら…
命を削っているようなものだから…
真剣さを伝えるために、深々と頭を下げるアキラ。
「………わかった」
たっぷり考えたのちトップは頷いた。
「…ありがとうございます」
頭をあげ、笑顔になりアキラは安堵のため息をつく…
「…ならこの書類に目を通して契約解消のサインを入れて終撮の日に持ってくること…」
棚から書類のファイルを出してくるトップ。
「はい…」
頷いてアキラは書類を受け取る。
「終撮は…逃げか死か、希望はどちら?」
終撮…BOUSとの関係を断ち切る撮影…
だから、もう撮影をしないという誓いのために、逃げてしまう内容の撮影か、死んでしまうという内容の撮影かを選ばなければならない。
「…死でお願いします」
アキラは迷うことなく答える、『逃げ』にしたら、またBOUSに引き戻される可能性がでるから…
BOUSのサクヤは殺しておかないと…。
その会話の一部始終を聞いていたケンジ。
(…マジかよ、マジでサクヤは…ここを辞めるつもり…なのか…)
ドアごしに屈んでいた身体を起こし…
フラフラと歩きだす…
(…辞めていいわけ、ないだろ…。契約違反だ…許されるはずがない)
拳に力を入れながら強く思う。
俯いたまま、少し広いフロアーに出るケンジ…
その途端、ドンっと、誰かと思い切り肩がぶつかる。
ぶつかった相手が勢いで怒鳴り付けてくる。
「っイテーな、気をつけろ!」
ケンジが顔を上げると…
撮影助手のナギが睨みつけていた。
「っ…すみません」
反射的に謝る。
「ケンジか、…ん?どうしたんだ、お前…」
そのまま過ぎ去ろうとしたナギだが、ケンジの様子を見て、再び声をかけてくる。
「えっ何が…」
ナンパ師で有名なナギだが、普段は自分に声をかけてくることなど滅多にない、少し引きながら言葉をだす。
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