142 / 145

第144話

男にぶつかりそうになってとっさにアキラを庇うみずき。 男も避けようとややよろけるが、再び走って逃げていく… その後を、ヒールを履いたお洒落な姿の女の人が走りながら指差して息をきらし叫んでいる。 「待って、バッグ返して!」 「…ッ待て!!」 その様子を見て、不意に買い物袋を置いて、走り出すみずき。 「おい!みずき!?」 驚くアキラだが… 「ッアキラ!すまない、すぐ戻るッ」 みずきは顔だけアキラ向けて言葉を出し、ひったくり男を追いかけていく… 「……」 ひったくり犯はまた路地を曲がって必死に逃げている。 「……ッ」 それを猛スピードで追いかけるみずき。 アキラをひとり置いてきてしまってかなり気掛かりではあるが、目の前で起こる事象を片付けることに集中する… 駿足なみずき… はじめ、50メートル以上あった男との差がどんどん縮まり… 走り続けて、ついに犯人に追いつく… 「待てッ」 男の上着を掴むが、男も易々と捕まりたくないため、振り解いて逃げようとするが… 明らかにみずきの方が足が速いので、すぐ追いつき… 抵抗する男にみずきは、後ろから体当たりをして動きを止める。 男は勢いのまま前のめりに転倒して、痛みにうめく… すかさずみずきは上から首と肩あたりを腕で押さえ、身体でのしかかり犯人を拘束して、ハンドバックを取り返す。 「おー!捕まえたのか、すげーなお前…」 あとから数人、みずきと同じ様に犯人を追ってきた通行人がみずきを褒める。 「すまない!」 みずきはその人をすかさず呼ぶ。 「ん?なんだ?」 「こいつを押さえておいてくれ」 そう言うと、犯人の拘束をまかせ、バッグを持って走って来た道を急いで戻るみずき。 「え、あ…おい!」 「…っ」 走りつづけていたのでやや息が切れるみずきだが… ハンドバッグの持ち主を見つけると駆け寄り… 「どうぞ…警察に連絡して…犯人は向こうに…」 バッグを渡しながら…それだけ伝える。

ともだちにシェアしよう!