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(日常小話)健康管理って大事だよね
※エロなしです。
閑話休題的な日常の小話を挟んでみましたヽ( ´¬`)ノ
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Side ひよしさん
「やっべーぞ」
「なにそれ?コロチキの真似?」
俺のつぶやきに対して、ソファで漫画を読みながら空が聞いてきた。
コロチキってなんだ?
「この間、健康診断があったんだけどよ。数値がたけーんだよ」
「何の数値?」
「尿酸値」
「痛風になるやつじゃん」
空が答えた。
棒読みだ。
感情が全くこもっていない。
漫画から目も離さない。
「お前なぁ、心配じゃねーの?俺が痛風になっても」
「むしろ痛風にでもなってくれた方が僕は平和ですから」
な、なんて野郎だ。
ほんっとに普段の空は無愛想で生意気で可愛げがない。
「お前、エッチのときはあんなに可愛いのにな」
それを聞いた空の顔がかぁっと赤くなり、こっちをチラッと見てから、漫画で顔を隠した。
この天然無自覚野郎め。
「っ、ていうか、体育教師なのに健康管理がなってないね」
誤魔化すように空が言う。
「まぁ毎日ビール飲んでるしな」
「魚卵も好きだもんね」
「まぁな。つーか、お前、魚卵が尿酸値が上がるってよく知ってるな」
そもそも、高校生が尿酸値なんて聞いてもピンとこねーだろ。
妙に物知りなんだよな、こいつ。
「あれ、学校行くの?今日土曜だよ」
身支度をしている俺に気付いて空が聞いた。
「教師は土日も行かなきゃいけない事もあんだよ。ほら、来週からテストだしな。準備が大変でよ。お前も漫画ばっかり読んでないでテスト勉強しろよ」
「はーい」
これまた気のない返事をして、漫画を読む。
高校生は気楽でいいよな。マジで。
そんなことを考えつつ、俺は家を出た。
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すっかり夜遅くなっちまった。
土曜だっつーのに、やる事が多すぎて、ついつい残業をしてしまった。
家のドアを開けた。
「帰ったぞー…ってもう寝てるのか」
明かりが消えてた。
つーかまだ21時だぞ。
小学生かあいつは。
俺はリビングの電気を付け、ビールを飲もうと冷蔵庫を開けたが、2、3本残っていた筈のビールがなかった。
代わりに付箋が貼ってあった。
『ビールは全てお隣さんへ差し上げました』
何しとんねん!
大好きなビールを取られ、頭に血が上った俺は、空を叩き起こしにいこうとした。
でも、次の瞬間、テーブルの上にラップされた料理が置いてあるのが目に入った。
近付いてみると、肉じゃが、海藻サラダ、ひじき煮が並べられていた。
なんだこれ。
もしかして、空が作ったのか?
あいつ料理なんて滅多にしないよな。
俺らは2人ともほとんど料理をしないので、外食やコンビニ弁当が多かったりする。
最近は、見兼ねたのか、お隣さんがお裾分けをくれたりするが。
ふと、そこにも付箋がある事に気付いた。
空の特徴のある丸字でこう書いてあった。
「食べていーよ」
その付箋を暫く見て、それから再び料理に目を向けた。
そして、フッと笑ってしまった。
全部、尿酸値を下げる効果のある食べ物だ。
あいつなりに考えて、作ったのだろう。
さっきの怒りはすぐに吹っ飛んでしまった。
俺は、あいつが時間をかけて作ったであろう料理に手を付けた。
そして驚いた。
「う、うまい」
料理の才能が開花しやがったのか?
普段料理しない奴にしては、なかなかうまかった。
じゃがいもはちょい固いけど。
そしてふと思った。
さては、あいつ、起きてやがるな。
恥ずかしくて寝た振りしてるな、絶対。
すげーからかいに行きたい。
つーか、それ以上に
なんか今
空の顔が無性に見たい。
…まぁ今日はそっとしといてやるか。
頑張ったんだもんな。
俺のために。
そう思い、空の手料理を無我夢中で食べた。
ソファに乱雑に置かれた何度も読んだであろう漫画の束。
その下に、漫画より読みふるされたかのようにボロボロになったレシピ本が置いてあることに気付いたのは、もう少し後のことだった。
END
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