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満員電車の悪夢①
※今回はひよしさん以外の攻めになります。
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朝、僕とひよしさんは別々の電車で学校へ向かう。
行き先は同じだけど、ひよしさんは教師だから僕より一時間くらい早めに家を出る。
それに、そもそも僕らが一緒に住んでいるなんて学校の人は知らないし、知られると色々面倒だから別々に家を出る必要がある。
この日も、いつも通り起床して、歯を磨いて、
いつも通りカロリーメイトを食べて、制服に着替えて、
いつも通り家に鍵をかけて、
いつも通り電車に乗る。
そして、いつも通りの1日が始まる…筈だった。
「…っ」
いつもの満員電車に乗って2駅目を過ぎたあたりで、僕のお尻や太ももを撫で回す手に気付いた。
すぐにわかった。
痴漢だ。
自分で言いたくはないけど、僕はよく痴漢に合う。
制服を着ているから女子と間違える筈はないし、男の僕を痴漢して何が楽しいのだろうか。
全く理解はできないが、痴漢によく合うというのは事実であり、その度に時間や車両を変えてきた。
最近は、あまりなかったから安心していたのに。
仕方ない、次の駅で降りよう。
今までも痴漢だとわかったらすぐ次の駅で降りて隠れて次の電車に乗るようにしていた。
そして、次の日からは時間と車両を変える。
これでもう出くわすことはない。
お陰で何回か遅刻した事があったが、痴漢に合ったなんて口が裂けても言えないし、言いたくないから、寝坊したって事にしていた。
次の駅に着いたので、すぐさま降りようとした。
こういうのはスタートダッシュが大事だ。
でも、そんな僕の動きを先読みしていたかのように、後ろからお腹のあたりを両腕でガバッと押さえつけられた。
すごく強い力だ。
こんなのは初めてだ。
僕は慌てて身じろぎをしたが、背後から耳元でささやかれた。
「逃さないよ」
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