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(日常小話)見つめる先には②
「ひよしさん、仕事しなくていいの?」
「あぁ、今日はもうほぼ終わり。グラウンド見回りしてたら、あいつらがサッカーやろうって誘うもんだから、仕方なく付き合ってやってたんだよ」
「仕方なくって顔じゃなかったよ」
僕は唇を尖らせて言った。
すると、ひよしさんが突然僕の頭をわしゃわしゃと撫でてくる。
「バレたか」
悪びれた様子もなく、ひよしさんが笑う。
その笑顔を見ると、何か言いたかったけど何も言えず、僕はただ頭をわしゃわしゃされるがままになっていた。
「もう少し待っててくれれば、車で一緒に帰れるけど?」
「ううん、大丈夫。車で送ってもらうの他の皆に悪いし、なるべくちゃんと電車で登下校しようと思うから」
「そっか、わかった」
僕とひよしさんは数秒見つめ合って、キスしそうな雰囲気になった。
「ひよしせんせー!サッカーやんねーの?」
グラウンドから声がして、慌ててお互い顔を離した。
「おー、いまいくー!」
ひよしさんは大きな声で返事した。
「じゃあ、空、またあとでな」
「うん、サッカー楽しんでね」
ひよしさんはグラウンドに向かったが、数歩進んでこっちを見て言った。
「空、『生徒と一緒になって楽しそうにサッカーして、ひよしさんってやっぱ子供だなー』って思ってただろ」
僕の事を指差しながらひよしさんが言った。
「バレたか」
僕は、ひよしさんの真似をして笑顔で答えた。
ひよしさんはニヤッと笑うと、小走りでグラウンドへ戻って行った。
その後ろ姿、
大好きな人の大きな背中を、
僕は瞬きもせずに見つめていた。
END
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