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(日常小話)映画デート②
僕はぷりぷりしながら1人で座席についた。
どうしたら女の子に間違えられないかなぁ。いっそのこと坊主にでもしたらいいかなぁ
スクリーンの予告を観ながらそんなことを考えていると、大学生くらいの女性2人が奥の席に行きたいみたいで、「すいません」と言って僕の前を通ろうとした。
「あ、すいません」
僕は足元の荷物をどかした。
僕の前を通ったあと、その2人の話し声がかすかに聞こえてきた。
「今の子、女の子かなぁ?」
「そうじゃない?すごい可愛かったよね」
ムカッ
思わず「男です!」って追いかけて言いそうになった。
せめて聞こえない声で言ってよ!
もうやだ。
なんか泣きたくなってきた。
1人でヘコんでいると、ひよしさんがポップコーン片手に戻って来た。
「なんだよ、まだ膨れてんのか?」
「別に膨れてません」
ポップコーンを掴み、口に入れた。
キャラメルの甘さが口いっぱいに広がった。
「ほら、これもやるよ」
「えっ、これ…」
それは、グッズ売り場で売ってた手のひらサイズのピー○ーラ○ットのストラップだった。
「な。機嫌直せよ。せっかく一緒に出かけてるんだから、いつまでも膨れてたってつまんねーだろ」
ひよしさん、僕の為にわざわざ買ってくれたんだ。
グッズ売り場、可愛いぬいぐるみやストラップばっかりだったから、買うの恥ずかしかったんじゃないかな。
「ありがとう、ひよしさん。でも、僕が機嫌悪いの半分はひよしさんのせいだからね?」
「はは、そーだな。悪かったよ。ごめんな」
ひよしさんが僕の頭を撫でる。
僕は、ひよしさんに頭を撫でてもらうのが好き。
ひよしさんもそれをわかってて、僕が泣いたり怒ったりすると頭を撫でてくれる。
「ひよしさん、頭撫でれば僕が機嫌直ると思ってるでしょ」
「あぁ、思ってるよ」
ひよしさんがニカッと笑った。
言い返そうと思ったけど、その通りだから何も言わなかった。
「膨れてる空も可愛いけど、やっぱ笑顔の空が一番可愛いよ」
ひよしさんがそっと僕の手の上に手を重ねた。
不機嫌にさせたり、笑顔にさせたり、きゅんとさせたり…
僕の心はいつもひよしさんに翻弄される。
映画館が暗くなった。
「あ、始まるよ。ひよしさん」
僕もその手をきゅっと握り返した。
END
◇◇◇
アルファポリスでも連載中です。
アルファポリスの方がかなり話進んじゃってます。
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