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第1話 妄想開始

 帰宅ラッシュの一両目、一番乗降口。  その端っこで、俺は後から誰かも分からない男に体を密着させられている。  男の硬い指が脇腹を通って前に回り、周囲に分からないように制服のシャツの上から乳首を捏ねくり回している。  その動きに俺は気持ち良くなりながらも耐えていて、でも徐々に我慢ができなくなってしまう。 「……っ」  ツンッと尖った乳首が男の指に引っかかって、捏ねられていた動きがやがて摘まむみたいに変わり、キリキリと力を込められる。その鋭い、痛みすら感じる刺激に押し殺した息が漏れる。  徐々に大胆に、男の腰が擦りつけるみたいに密着して上下に揺れている。男も興奮しているのか、ズボンの中で硬くしている。  首筋にかかる荒い息づかい。わざとスライドする腰使い。  俺の前も電車の壁に押しつけられ、下着に擦れて興奮に濡れている。  あぁ、このままじゃ……!  恥ずかしさと、いけない事をしているという焦りと、だからこその興奮でのぼせ上がりそうになっている。  あと少し。あと少しで……  そんな切羽詰まったところまできて、俺の妄想終了。車内アナウンスと共にドアが開いて、人の波に呑まれるようにホームに出た。  これは俺の妄想。  満員電車で知らない男に後から痴漢されて興奮して、イキそうになるっていうどうしようもない変態脳内変換。実際は何もない。  いや、満員電車なのは本当だし、一両目一番乗降口の端っこにいるのも本当。  出もそこから先は勝手な思い込み。今日もそれなりに興奮して満足した。  なんでこんな妄想するかって?  それは自分の性癖と変態性に気付いてしまった、やりたいお年頃の悲しい性とうやつだ。

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